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(2014年4月18日の日経ビジネスオンラインに掲載された記事を再編集しました。肩書などは掲載当時のものです)

 行動経済学の第一人者であるダン・アリエリー米デューク大学教授。著書『予想どおりに不合理』(早川書房)などで知られる。なぜ人は「予想通りに不合理」なのか。行動経済学が主流派の経済学と違うと言われる理由などについて聞いた。

■お知らせ
ノーベル賞経済学者・リチャードセイラー教授の孫弟子である元世界銀行シニアエコノミストの田中知美氏が、セイラー教授のインタビュー動画を使って行動経済学を解説するウェビナーを開催します。
開催日:2020年11月19日(木)夜8時~
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いわゆる伝統的な経済学と、行動経済学の違いとはどのようなものでしょうか。

ダン・アリエリー米デューク大学教授(以下アリエリー):まず、伝統的な経済学はとても単純な仮定からスタートしています。人々は完全に合理的で、揺るがない選好性があると仮定しています。一方、行動経済学にはそんな仮定はなく、実験、実験で実際の行動を観察することからスタートします。

 そして、経済理論が描く「合理性」から外れた行動を確認してその理由を解き明かしていく。そのため行動経済学の方がはるかに現実的で、それゆえに伝統的な経済学よりも人間について少し悲観的です。そして、だからこそ面白い。

 行動経済学は経済学ではない、という人がたまにいるようですが、お話になりませんね。行動経済学は世界中からデータを集めていますし、そのデータを正しく取り扱って分析しています。私自身も伝統的な経済理論は好きですし、人間の性質の一部を描いてはいると思います。

制度を考えると人が完全に合理的だと仮定できない

 しかし、例えば実際に新しい税制を導入する、新しい病院を建設する、新しい空港を造ろうといった時に、納税者、病院の患者、あるいは空港の利用者の行動が完全に合理的であると仮定して設計することが果たして正しいのでしょうか。あまりに単純化し過ぎではないでしょうか。