(2013年6月3日の日経ビジネスオンラインに掲載した記事を再編集しました。文中肩書などは掲載当時のものです)

「創造的破壊が起こりやすい制度にしなければ、国家は失敗する」との主張を展開した、ジェームズ・ロビンソン米ハーバード大学教授との共著『Why Nations Fail: The Origins of Power, Prosperity, and Poverty』(編集部注:『国家はなぜ衰退するのか:権力・繁栄・貧困の起源(上・下)』早川書房。本インタビューは翻訳が出版される前に実施)で知られるダロン・アセモグル米マサチューセッツ工科大学(MIT)教授。国が繁栄する条件は何か、成長が止まったとき、国は何をすればいいのかなどについて、聞いた。

ここのところ途上国支援やビジネスの関係でインタビューをすると、「インクルーシブ(inclusive)」という言葉をたびたび聞きます。全員を戦力化していく、という文脈です。

 そうなのですか。我々が共著『Why Nations Fail』で使う以前は、inclusiveなど、そのような文脈ではあまり聞かなかった言葉でした。聞いたことがあったなら、ジェームズ・ロビンソン教授と一緒に「本当にこの言葉でいいのかな?」と悩んだはずですからね。著作権マークでもつければよかった(笑)。どの国のどのような立場の人たちも経済的困難に直面し、新たな視点を模索しているのでしょうね。

インクルーシブは、ダイバーシティー(多様性)と同義でしょうか?

 同義といえば同義なのですが、多様性は全員参加を実現する最初のステップにすぎません。多様性が大事だというときは、単に(既成の枠の中に)多様な人々をまず増やすのが目的でしょう。そうではなく、全員をテーブルにつけ、幅広い人々を(意思決定に)巻き込んで新しいものをつくり上げていける制度が、インクルーシブという言葉で言いたいことです。

収奪的な成長と、インクルーシブな成長は違う

つまりは「全員参加」でしょうか。共著作『Why Nations Fail』では、国家が栄え続ける発展段階で、まず特定層のための中央集権的で収奪的な制度ができ、それから創造的破壊を起こすために「全員参加型(inclusive)」の制度に変わっていく必要があるとしていました。そうしますと、国の成長には制度が一番重要なのですか。

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