(2015年1月26日の日経ビジネスオンラインに公開した記事を再編集しました。文中の肩書などは掲載当時のものです)

 少し前のことになるが、昨年(編集部注:2014年)5月、1992年のノーベル経済学賞受賞者である米シカゴ大学のゲーリー・ベッカーが逝去した。彼は、労働経済学、家族の経済学、教育の経済学、政治経済学など応用経済学の分野において基本的な問題提起となる研究を数多く残し、その後の経済学研究に大きなインパクトを与えた。先だって来日したノーベル賞経済学者ジェームズ・ヘックマンや『ヤバい経済学』の共著者として知られるスティーヴン・レヴィットなど、現在活躍している世界的な経済学者も、ベッカーの影響を受けた人たちだ。

経済学界で厳しく批判され続けたベッカー

 しかしベッカーほど、経済学界の内外で批判を受けてきた経済学者も少なかった。それは彼自身や彼の影響を受けた研究が必ずしも広く読まれてこなかった日本で、さらに著しい。筆者は経済学を学びにシカゴ大学に留学したが、当初は積極的な選択ではなかった。

 しかしすぐに、日本でのベッカーに対する批判は完全に的外れであることを認識し、彼の下で博士論文を書き上げ、経済学者の端くれとなるに至ったのである。

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