(2011年7月29日の日経ビジネスオンラインで公開した記事を再編集しました。肩書などは掲載当時のものです)

 最近では日本のみならず、欧米においても、財政再建や国債の残高に関する議論が活発になっている。その背後には、欧米諸国がリーマン・ショック以降に強めた拡張的財政政策の結果として積み上がった、巨額の国債残高がある。この残高の積み上がりまで考慮する場合、拡張的財政政策の総合的な効果をどのように考えるべきだろうか。

「1%の財政支出増大でGDP約1.5%増大」?

 財政出動の成果を判断する際に、「乗数効果」という考え方がある。多くのマクロ経済学の教科書では、初めにケインズの乗数理論が説明されている。

 この理論では、家計は所得の一定割合を消費すると考える。これを限界消費性向という。限界消費性向を「c」とすると、財政支出が一単位増加すればGDP(国内総生産)が「1/(1-c)」だけ増えることが示される。これを財政乗数と呼ぶ。限界消費性向が0と1の間にある限り、財政乗数は1以上になる。乗数が1以上であるということは、拡張的財政政策が政府支出以外の需要項目も刺激し、全体として経済拡張効果を持つことを意味するわけだ。

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