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(2012年3月13日の日経ビジネスオンラインに掲載された記事を再編集したものです。肩書などは掲載当時のものです)

 少し前のことであるが、米ブルームバーグビジネスウィーク誌に「ケインズ vs. アレシナ:アレシナとは何者だ?(Keynes vs. Alesina. Alesina Who?)」という記事が掲載された。かの有名なケインズと対比されるほど脚光を浴びているのは、新しい政治経済学を提唱しているアルベルト・アレシナ米ハーバード大学教授である。国家がなぜ統合したり分裂したりするのかという壮大なテーマから、財政再建と経済成長を両立させる現実的な政策提言まで、その研究対象は幅広い。現在、アカデミックな世界だけでなく、実務に携わる政策担当者からも研究動向を注視される経済学者のひとりである。

 彼の研究のうち、最も有名なものの一つ、かつ欧州を中心に政策面で多くの影響を与えたものが、1996 年に同じくイタリア人経済学者であるロベルト・ペロッティ・ボッコーニ大学教授と共同で発表した財政再建に関する研究である。ケインズが拡張的な財政政策を景気回復の処方箋として提示したのに対し、彼は、思い切った歳出削減によって、財政再建の成功確率が高まると同時に、それがその後の経済回復に資する可能性があると主張したのだ。