(2014年4月24日の日経ビジネスオンラインに掲載された記事を再編集しました。肩書などは掲載当時のものです)

ゲーム理論といえば、ナッシュ均衡が有名だ。だが、ゲーム理論で読み解けるのは、何もそうした「ゲーム」だけではない。国内におけるゲーム理論研究の第⼀⼈者である、松井彰彦東京⼤学⼤学院経済学研究科教授に聞いた。

経済学が本格的にビジネスや政策に生かせる実用的な学問になりつつある感じがしています。どういった背景で、経済学者が研究室から飛び出し、現実社会に目を向けるようになっていったのでしょうか。

 私が学生のころ、1980~90年代ぐらいは、理論と実証というのはかけ離れていて、理論の人は理論、実証の人は実証とはっきり分かれていました。

 今も、確かに強みや専門性という意味で理論か実証かというのはあるのですが、実際に論文を書く段階になると、理論をデータで確かめようとか、あるいはそのデータを使って理論を現実に応用しようとか、そうした流れが広がってきました。

松井彰彦(まつい・あきひこ)
東京大学大学院経済学研究科教授
1962年生まれ。東京大学経済学部卒業。米ノースウエスタン大学M.E.D.S.でPh.D.取得。筑波大学社会工学系准教授などを経て現職。(写真:陶山勉、以下同)

 昔は実証なき理論とか、理論なき実証とか互いに批判し合っていたり、その様子を外部から批判されたりもしたのですが、そうした反省も踏まえて、理論と実証を組み合わせたものを考えようという動きが出てきたのです。それが1つの大きな流れになって、例えば構造推定のような手法が誕生したのでしょう。

構造推定とは?

 構造推定、Structural Estimationというのですが、主に実証研究で使われる分析手法です。90年以降、分析手法として確立していきました。

 理論的には既存の簡単な理論を使ってパラメーターを推定し、そこに実際のデータを使ってみて、「こう政策を打ったらこういう効果が出るだろう」と推定する手法です。実際のデータで検証するもので、計量経済学の手法を使っています。

計量経済学というのは、ざっくり言ってしまうと、統計手法を使って、ある結果を、いくつかの説明変数でどうやって説明するかを考えていく分野ですね。

 計量経済学者が常に突き止めたいのは、そこに因果関係があるかどうかです。相関関係だけではなくて。

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