この対談企画では、戦略コンサルタントとして活躍し『経営戦略全史』の著者として知られる三谷宏治氏、そして『孫子』や『論語』、渋沢栄一など中国古典や歴史上の人物の知恵を現代に活かす研究家の守屋淳氏が、縦横無尽に世界の歴史や企業経営に斬り込み、現代日本の課題解決につながるヒントを探り、語り合います。
前回は、世界的ブランドに上り詰めた日本や韓国の企業や世界的ブランド、日本マンガの成功パターンを論じました。今回も同じテーマをさらに深めていきます
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日本の世界ブランド3:コマツやホンダ、シマノはトップの気合から
(三谷、以下み): 前回の最後にユニクロ(ファーストリテイリング)の海外展開は、経営者の気合だと言いました。過去でいえば、ホンダにしてもコマツにしても海外展開に成功した理由は同じく経営者の気合でした。1970年代、80年代、トヨタもホンダもコマツも、海外で、最初はひどい商品だったかもしれないけれども、それが徐々に成功し始めます。GMやフォード、キャタピラーといった絶対王者がいるにもかかわらず、です。
その頃、それらの日本企業のことを欧州や米国の経営学者が研究して、立てた理論があって「ストラテジック・インテント」(*1)と名付けられました。「戦略的な意思・意図」ということですが、つまりは「経営者の気合」です。よく分からなかったから「戦略的」と付ければいいだろうと(笑)。
当時、「何言ってるんだろう」と思いながら聞いていました。「頑張れば何とかなる」みたいな理論に見えたので。でも、実は本当にそうだったのかもしれないことが、ホンダの研究によって明らかにされたのです。BCGによる「ホンダは戦略的にとても優れていた」という分析が出た後に、ホンダの当時の幹部陣にインタビューしたリチャード・パスカルらが、「ホンダに戦略はなかった」と明らかにしました(*2)。幹部たちに「なぜ米国市場を狙ったのか」と聞いてみたら、「特に理由はない。どうせやるなら世界一厳しい市場で戦ってみたかった」。「小型バイクで成功した理由は?」には「もちろん大型でやりたかったが性能的にダメだった。でも社員がスーパーカブで走り回っていたら、それいいね、と言われてたまたま」と(笑)
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