この対談企画では、戦略コンサルタントとして活躍し『経営戦略全史』の著者として知られる三谷宏治氏、そして『孫子』や『論語』、渋沢栄一など中国古典や歴史上の人物の知恵を現代に活かす研究家の守屋淳氏が、縦横無尽に世界の歴史や企業経営に斬り込み、現代日本の課題解決につながるヒントを探り、語り合います。
前回は、事業による海外展開難易度の差や、ネスレやLVMHの海外展開について紹介しました。今回は、世界的ブランドに上り詰めた日本や韓国の企業、さらに日本マンガの成功パターンを見ていきます。
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ORIENT(オリエント):原義は「ローマから東の方向」。時代によりそれはメソポタミアやエジプト、トルコなど近東、東ヨーロッパ、東南アジアのことを差した。転じて「方向付ける」「重視する」「新しい状況に合わせる」の意味に。
日本の世界ブランド1:ダイキンは機能の集中と分散で勝負
(三谷、以下み):世界が凸凹だからこそ、それを乗り越える企業が出てくると一気に集約化が進みます。もちろんこれは、世界の凸凹対応に相当長けていないとできません。それができる日本企業のひとつはダイキンでしょう。 第7回(「ダイキン、原田左官の新しい人材育成手法」)、 第8回(「能動的に探究できる人材の育て方」) の人材育成の話だけでなく、グローバル対応を相当上手にやっていると思います。
空調機器は派手な商品ではないけれども、BtoBもBtoCも重要な商品でかつ多様です。機能も国によってかなり違っています。東南アジアでは冬でも暖かいのでエアコンは売れず、冷房機能のみのクーラーしか売れません。でも日本ではもう作ってすらいません。
大きさや能力も、求めるものが地域によってまだまだ違うし、永遠にそうかもしれません。その差をうまく吸収したり統一したりするのではなく、各々できちんと作りながら、でもコアな技術の投資には本国である日本が頑張るような、集中と分散のバランスをうまくとっています。
今や世界150ヶ国で販売し、生産拠点は90ヶ所以上。各地域でのニーズを的確に把握し迅速に反映させていくための現地密着型「R&Dセンター」が25ヶ所。うち5ヶ所は、それらを支援しキー技術を高めるための「マザーR&Dセンター」となっています。従来は日本がすべて担っていたキー技術の開発を、地域ごとの得意分野で任せるようにしたのです。マザーR&Dセンターのひとつがあるインドでは、インド国内でも4地域で大きく異なる課題(中央部では気温54℃に耐えられるクーラーが必要とか)に、的確に対応できるようになりシェアが大きく上がりました。
そして日本だけにあるのが、TIC(テクノロジー・イノベーションセンター)です。世界中の人や情報・技術を呼び込んでイノベーション創出に挑む「協創」の場です。
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