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 この対談企画では、戦略コンサルタントとして活躍し『経営戦略全史』の著者として知られる三谷宏治氏、そして孫子をはじめ渋沢栄一など歴史上の人物や古典の知恵を現代に活かす研究家の守屋淳氏が、縦横無尽に世界の歴史や企業経営に斬り込み、現代日本の課題解決につながるヒントを探り、語り合います。

 前回は、薩摩の郷中教育の事例をもとに、意思決定力について話し合いました。

 今回は、ビジネスパーソンがそれを鍛えるにはどうすればよいのかについて、成功している日本企業のケースを探るとともに、キャリアのあり方について考えていきます。

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ORIENT(オリエント):原義は「ローマから東の方向」。時代によりそれはメソポタミアやエジプト、トルコなど近東、東ヨーロッパ、東南アジアのことをさした。転じて「方向付ける」「重視する」「新しい状況に合わせる」の意味に。

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「起業」チャンスが多い食品メーカーやリクルート、サイバーエージェント

(み):食品メーカーには、独立ブランドがたくさんあって、新商品もよく出すので意思決定のチャンスが多く存在します。味の素もハウス食品も昔からさまざまな体制を試していて、意思決定者(ブランド・マネジャーなど)をこうやって育てていこうとか、どこまでその者に任せるかとか、いろいろやっています。いずれにせよ、意思決定をするマーケティング部門は花形と位置付けられているので、多くの若者はそこを目指すわけです。現場で実績を出して、勉強会で意欲を見せて、登用してもらって、任せてもらってダメなら交代、ということをどんどん続けていくのです。

 また別の成功例がリクルートでしょう。もともとは単品商売の会社でしたが、1990年代以降、中古車(CAR SENSOR)、結婚式(ゼクシィ)、自己啓発(ケイコとマナブ)、書籍情報(ダ・ヴィンチ)、地域情報(じゃらん)……と多くのビジネスを立ち上げました。今はなくなったり他社に移ったりしたものもありますが、たくさんブランドがあって、たくさんビジネスがある。だから若き意思決定者たちが活躍できる場が社内にいっぱいあるわけです。そしてダメなら担当者を代える、それでもダメなら撤退する・売却する、を結構冷徹にやっています。

 さらに藤田晋(すすむ)率いるサイバーエージェントは、これを徹底的に仕組みにしています。社内コンテストなどを通じて毎年100近くのサービスが立ち上げられ、子会社も現在115社を数えます。そのうち26社は20代が社長です。

 でもそういう小さな事業体やブランドがあまりないところだと、ピラミッド型のヒエラルキーになりやすいし、慎重で間違えない意思決定が求められます。でも、これから新しいことをやっていこうというなら、意思決定者としての場所や機会などをどんどんつくっていかないと。これが米国アメリカならイコール、スタートアップになるわけです。スタートアップがいくらでも存在し得るし、自分がリーダーにならなくても、そこに参加することにおいて自分を鍛えられます。日本でその機会が少ないなら、コーポレイト・ベンチャリングとして会社内外に自ら起業機会をつくるしかないのです。