Orientとは:語源はラテン語のOriens「日が昇る方向」で、原義は「ローマから東方の世界」。時代によりそれはメソポタミアやエジプト、近東のイスラム諸国、アジア全域、東南アジアのことを指した。転じて「方向付ける」「重視する」「新しい状況に合わせる」の意味に。(写真=Vince Caligiuri / Getty Images)
「ORIENT」は三谷宏治氏と守屋淳氏のビジネス対談です。その目的は古今東西の叡智を、読者諸氏の未来に活かすことにあります。
2人は何者なのか?

(三谷宏治:み)大学卒業後20年弱ボストン コンサルティング グループ(BCG)とアクセンチュアで経営コンサルタントとして働きアクセンチュアでは戦略グループの統括も務めました。2006年以降は教育活動に注力しています。でもMBA教授は世を忍ぶ仮の姿。『経営戦略全史』『新しい経営学』『戦略読書〔増補版〕』などの執筆者でもありますが、メインは子ども・親・教員向けの教育活動を頑張っています。小1向けの授業とか、シビれますよ~(笑)
(守屋淳:守)私はまず10年ほど書店で働いていました。そのとき英単語集の『DUO』がベストセラーになるのをお手伝いした縁で、改訂版の例文には私がMolly(モリー)として出てきます(笑)。その後は元々の専門を活かして、本の執筆や講演・研修をしています。『孫子』『韓非子』や『論語』などの中国古典や、明治の偉人 渋沢栄一についてのものが中心です。昔は「孫子の人」といわれてましたが、今は「渋沢栄一の人」と呼ばれることが多いです(笑)
どうしてこの連載が始まったのか?
(み)私は基本、対談物の記事や本が嫌いです。なんだか中身がバラバラ過ぎて。でも数年前、ある雑誌の企画で守屋さんと対談して、楽しかったんですよねえ。スパイラルに向上していく感覚がありました。現在や将来のビジネスを語るのに、2人が持つまったく別のバックグラウンドが合わさって、新しいものを生み出せる感覚がありました。最先端の事例やコンセプトを追うのもいいですが、遠くにこそジャンプの芽はあります。150年前や2500年前の叡智、東西2万kmの違いから、きっと学びがあるはずです。この対談でも、それを引き出せるよう頑張りマス。
(守)最初に三谷さんの『経営戦略全史』を拝読したとき、ナンダこれは、とひっくり返りました。私も色々な経営戦略の本を読んできましたが「なぜある戦略は歴史に登場したのか」「その強みと弱みは何か」「そして戦略全体を俯瞰する軸とは何か」をここまで端的に示したものは皆無でした。しかもご本人はコンサルタントとして大きな成果も上げている。そんな知性の持ち主とご一緒できるんでしたら、もう喜んで何でもやります、と。実際は、日経BPの編集者Sさんの策略から始まった、が正解かもしれませんが。(笑)
(み)その通り。でも燃える(萌える?)テーマを投げかけてもらえることが、我々にはありがたいですよね。
読みどころは?
(守)三谷さんが「ジャンプ」と言っていましたが、私なりにいいかえると「類推」の力なんです。たとえば『孫子』は、その戦術を「猛禽(もうきん)」や「水の流れ」から学んでいる面があります。動物の動きや自然現象から「類推」して、戦術についての新たな洞察を得ている。例えば「(量ではなく)速い水流こそが岩を浮かす」ことから「軍隊には勢いが大切だ」を見抜く。
でも、たとえば同じ戦術が、実は他の戦術書から借りてきたものだとしたら、これは単なる受け売りでしかない。同じように他から発想を借りてきても、片や新たな洞察となり、片や単なる受け売りとなる。ふたつの違いを生むもととは、一見無関係なジャンルから、いかに「類推」を利かせてコンセプトや発想を生み出せるか否か。三谷さんと私、まったく違うジャンルが結びつくことで、うまくこの「類推」の力が発揮できればと思っています。
(み)確かに軍隊の数が倍になってもその運動エネルギーは2倍になるだけだけれど、移動速度が倍になれば運動エネルギーは4倍ですものねえ。「軍隊の動きって水の流れに似ているなあ」で終わらず、そこまでいってはじめて類推による洞察になるわけだ。ふむ。
この対談企画はどう進む?
(み・守)この連載では現代日本の課題をA成長、B創造、C人材、D学習などの分野に分け、2人で数時間の対談をしていきます。脱線や余談も多いと思いますが、2人の幅広い視点からの掛け合いを楽しんでもらえればと思います。
歴史を学んでも、そこに正解はありません。同じ歴史が繰り返すことはなく、必要なのは今の自分に対する個別解だからです。しかし、そこには故人・偉人たちによる膨大な試行錯誤とその結果が眠っています。学べることは無限大! 激変する新しい状況の中で、自身の進路を定めるために、是非この連載を役立ててください。Orient yourself!
(写真=吉成大輔)