(日経ビジネスオンラインに2013年10月2日に公開された記事を、再編集したものです。肩書などは当時のものです)

 顧客の購買行動や時間による変化など、膨大な細かいデータの蓄積・分析が可能になり、いわゆる「ビッグデータ」の活用が叫ばれている。そしてデータ解析の専門家「データサイエンティスト」の実力にも注目が集まってきた。

 日本にもこの波はじわじわと押し寄せ、データ分析から判明したことを意思決定に生かそうとする企業も増えている。抽象的な議論が多い中、ここでは実際に最先端のスキルを持ったプロのデータサイエンティストが分析し、事業分析に活用できた1つの具体例を詳しく見ることにしよう。

 東日本旅客鉄道(JR東日本)では「エキナカ自販機」の売り上げ増を目指してこの秋、管内主要20駅でこれまでになくきめ細かな商品展開を実施している。同じ駅であっても異なる個々の自販機ごとの売り上げ特性に対応した「ホット」への切り替え作業を、ビッグデータの分析を基にしながら進めている最中なのである。

 JR東日本管内でエキナカ自販機を主力事業として展開するJR東日本ウォータービジネスは、「小売業としての自販機」を念頭に、ビッグデータを駆使したマーケティング改革に本腰を入れて取り組んできた企業の1つだ。2012年度の自販機による売り上げは約278億円である。

 2009年度に初の減収を経験して以来、「量から質へ」の転換を模索。同年から自販機POS(販売時点情報管理)データを分析し、売り上げ回復に生かしてきた。そして2013年夏、すべての自動販売機1万台のおよそ半分に当たり、POSデータの取れる自動販売機約5200台の、1年分約2億件に上るデータを最先端の手法で詳細に分析。飲料の売れ方について、個別の特徴を突き止めることに成功した。

 例えば、「いつコールド飲料からホット飲料に切り替えるべきか」について、個別の自販機ごとに突き止めたのだ。最先端の手法を駆使してこの分析に携わったデータサイエンティストは、実は母国を離れて米国や英国で活躍し、研究に力を注いでいる日本人経済学者たちだった。

頭のもやもやが「モデル解析」ですっきり

 「頭のもやもやがすっきりと晴れたような気分だ」

 渡辺安虎・米ノースウエスタン大学経営大学院助教授、英ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス経済学博士課程の川口康平さん、上武康亮・米エール大学経営大学院マーケティング学科助教授、そしてアシスタントを務めた東京大学の大学院生らのチームによるデータ分析の結果を聞いたJR東日本ウォータービジネスの担当者らは、思わずそう漏らした。

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