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(2013年6月11日に日経ビジネスオンラインで掲載した記事を再編集したものです。記事中の肩書やデータは当時のものです)

 「アベノミクス」の3本目の矢として、様々な成長戦略が提案された。その中心は女性や若者であり、教育は医療と並んで大きな期待が寄せられている分野である。また、高校無償化や孫への教育資金贈与を非課税にするといった新たなルール作りも進行中である。

 奨学金制度のような教育政策が学業を望む学生個人にとってありがたいのは言うまでもないが、それが社会全体としてどれだけ有効な仕組みなのかについては、いまだに議論の余地があるところだ。ここでは、大学における奨学金を切り口として、教育政策と雇用問題、マクロ経済について考えていきたい。

 学生時代に借りた奨学金の返還に困っているという事例が数多く報告されている。日本学生支援機構(JASSO、旧日本育英会)によると、2010年度末時点で奨学金返還を1日以上延滞した人の数はおよそ34万人、6カ月以上延滞している人は18万人にのぼる。大学などが個別に実施している奨学金も含めれば、その数はさらに増す。

 奨学金の返還が困難になる事例が増加した背景には、若年の雇用問題がある。せっかく奨学金を獲得して学業に専念したとしても、就職活動で失敗すれば、奨学金返還は大きな負担としてのしかかってくる。実際、派遣労働やフリーターといった非正規雇用で低所得にあえぐ若年労働者にとって毎月の奨学金返還額は大きな負担だ。再チャレンジが容易な社会であれば、十分な所得が得られる職に就くまで奨学金の返還期限を延長すればよいだけなので、問題は深刻にはならないが、現在の日本では新卒時の就職活動の失敗が様々な形でその後の賃金に大きく影響を与える。そのため、新卒採用時につまずいてしまうと、いつまでたっても奨学金返還の見込みが立たなくなってしまう。

日米の大学の学費はどんどん高くなっている

 大学を卒業してから何年もたっていて最近の大学の学費については疎い読者も多いであろうから、日米の学費事情について簡単にデータを紹介しよう。