(2015年4月21日の日経ビジネスオンラインに掲載した記事を一部修正のうえ、再編集しました。肩書などは掲載当時のものです。ただし、本記事掲載後、査読付き学術誌に正式に掲載された出所論文については文末で情報を更新しました)

 ここ数年、宅配デリバリーや家事代行サービスといった、新しいタイプのサービス業の出現が新聞やニュースを賑わせている。背景にあるのは、自分自身で家事に時間やお金を割くよりも、業者からサービスを購入したほうが効率的であるという消費者側の考え方だ。事実、日常生活において家事全てを自分自身でするということは、多大な労力と、付随する時間的なコストを伴う。

 実際のデータは、家事というものが、決して無視できない規模の経済活動であることを示している。米国のデータによれば、家庭内労働は対GDP比36%(2010年)という付加価値を生む巨大産業だ。そして、近年、この家事という巨大産業が、サービス業によって徐々に代替されつつある。

衰退している「家事」という産業

 図1は、米国のデータを使って、家事と、サービス業の「拡大」総消費における付加価値の割合をプロットしたものだ。ここでいう「拡大」総消費とは、国民所得勘定のデータに表れる総消費に、データに表れない家事の付加価値分を足したものである。赤い実線が家事、青い実線がサービスを示している。

図1:米国で家事とサービス産業が生み出す付加価値が消費に占める割合(1947年~2010年)

 図1から明らかなように、家事の生み出す付加価値の消費における割合は、減少の一途をたどっている。そしてそれと相反するように、サービス産業の生み出す付加価値の割合は上昇している。

 これらの変化には、どういったメカニズムが働いているのだろうか? 家事の衰退とサービス産業の発展には何か関係性があるのだろうか? 時代背景に詳しい読者であれば、1980年代以降米国では女性の社会進出が進んだから、それが原因だと答えるかもしれない。では、そもそもなぜ女性の社会進出が進んだのだろうか?

 著者が、イタリアのカリアリ大学のアレッシオ・モロ助教授、オーストラリアのモナシュ大学のソルマズ・モスレヒ助教授と行った最近の研究では、既存の経済学のツールと、「労働生産性」という概念を使って、家事とサービス産業の関係とその消費における割合の変化について説明を試みた。

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