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 企業は何のためにあるのか――。英オックスフォード大学サイードビジネススクールのコリン・メイヤー教授は、この古くて新しいテーマを長年、研究してきた。本連載では、メイヤー教授、その長年の共同研究者である早稲田大学の宮島英昭教授と、コーポレートガバナンス研究が専門の同鈴木一功教授にコロナ後の市場経済の在り方について聞いていく。メイヤー教授インタビューの2回目は、メインバンク制や株主至上主義についてさらに掘り下げる。(聞き手は広野彩子)

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第3回 2020年6月24日公開予定
社会の問題解決のために、ビジネスがある(写真:PIXTA)

 本連載の1回目で、会社という存在の歴史をひもときながら「会社は本来、公益のために存在するもの」と断じた英オックスフォード大学サイード経営大学院のコリン・メイヤー教授。今回は、会社の利益至上主義をどう「制御」するかの議論に焦点を当てる。

 日本では、企業が利益を出して利息を払っていれば、持ち合い株を保有する銀行が大企業の「物言わぬ主力株主」だった時代もあった。だが年金基金や保険会社、公的ファンドなどが大企業の株式を保有したり、互いに株式を持ち合ったりする構造そのものは悪くなかったとメイヤー教授は指摘する。問題は、仕組みではなく、ガバナンスなきもたれ合いの構造だった。

コリン・メイヤー(Colin Mayer)
英オックスフォード大学サイード経営大学院教授
英オックスフォード大学卒業、同大学経済学博士(Ph.D.)。ロンドンシティ大学教授などを経て1994年から現職。2006~11年には、サイード経営大学院学院長を務めた。金融論のトップジャーナルで編集委員を務める一方、ヨーロッパ経済政策センター(CEPR)、ヨーロッパ・コーポレートガバナンス研究所(ECGI)フェローなどを歴任。

 「年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の水野弘道前理事は、機関投資家の役割を強める方向で動いた。背景にある問題意識は、かつてのメインバンク制度のようなガバナンスだ。以前とは政策も変わった。スチュワードシップ・コードと呼ばれる機関投資家の行動規範ができて、機関投資家は投資先の企業でより監督人の役割を果たさなければならなくなった。とはいえ、それもまだお題目だけで実効性は小さい。ある意味で、2013年から2014年にかけての日本のコーポレートガバナンス改革は、英国にあるコーポレートガバナンスコードととても似通っている。