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 企業は何のためにあるのか。この古くて新しいテーマを長年、研究してきたのが英オックスフォード大学サイード経営大学院のコリン・メイヤー教授だ。2019年は米国発で株主至上主義に対する疑義が唱えられ、大きなうねりとなっていった。

 そんな潮流の中で、新型コロナウイルスの「災禍」が人類を襲い、企業経営やそこで働くこと、そして社会との関係を見つめ直す機運も高まった。改めて、企業とは何のためにあるのかを問い直す議論も増えている。

 本連載では、メイヤー教授、長年の共同研究者である早稲田大学の宮島英昭教授と、コーポレートガバナンス研究が専門の同大学・鈴木一功教授にコロナ後の市場経済の在り方について聞いていく。また最後に、2019年11月に日本学術振興会の拠点形成事業として、早稲田大学高等研究所、早稲田大学ビジネススクールなどの共催により早稲田大学日本橋キャンパスの早稲田NEOにおいて開かれた、メイヤー教授の講演録を公開する。(インタビュー聞き手は広野彩子)

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第2回 「企業には、契約より信頼の方がはるかに重い」
(写真:PIXTA)

 企業は何のためにあるのか。英オックスフォード大学のコリン・メイヤー教授によれば、企業の起源をたどると2000年前のローマ帝国にあり、そもそもは公益を満たすためにつくられたという。では、それはどのようなきっかけで利益至上主義になったのか。なぜ「利益」「株主至上主義」に変わったのか。

企業の目的を変容させた「フリードマン・ドクトリン」

 「企業は2000年前、ローマ帝国時代に最初につくられた。基本的な考え方は『組織は極めて公的な機能として活動しなければならない』ということにあった。ローマ時代の企業の役割は、徴税し、貨幣をつくり、公的な建物を維持管理することにあった。

 だが、ビジネスの唯一の目的は利益を生み出すことだとする新たな理念が、1962年のいわゆる『フリードマン・ドクトリン』により生み出された。フリードマンとは、ノーベル賞経済学者のミルトン・フリードマンだ」