一橋ビジネススクールの楠木建教授と社史研究家の杉浦泰氏による人気連載「逆・タイムマシン経営論」。経営判断を惑わす様々な罠(わな=トラップ)を回避するすべを、過去の経営判断や当時のメディアの論調などを分析することで学ぶ。第1章では、「AI(人工知能)」や「サブスクリプション(サブスク)」といったバズワードに象徴される「飛び道具トラップ」、第2章では、新しい技術やビジネスが登場するたびに「激動期が訪れた!」という錯覚に陥る「激動期トラップ」を分析した。
第3章のテーマは「遠近歪曲(わいきょく)トラップ」。なぜ、「遠いものほどよく見え、近いものほど粗が目立つ」のか。私たちは、例えばイノベーションでは米国のシリコンバレー、社会モデルではスウェーデンなどの北欧諸国を「すばらしい」と礼賛しがちだ。こうした地理的に遠い諸外国だけではなく、時間軸でも「あの頃は良かった」と遠い過去のことも美化してしまうのは世の常だ。
こうした「遠近歪曲トラップ」にはまらないためにはどうしたらよいのか。全5回で検証する。(写真:PIXTA)