中国のシェア自転車サービスの代表選手として知られた「摩拝単車(モバイク)」。その名前に見覚えのある読者もいるのではないだろうか。だが、競争激化によって経営難に陥り、中国のシェア自転車ブームもすっかりしぼんでしまった。ところが、そのモバイクが美団点評の手によって“復活”を遂げていた。
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- 第1回中国IT業界の「新星」 美団点評の成長促す「2つのループ」
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- 第4回美団点評の競争力、源泉は情報システムにあり
美団点評は、シェア自転車サービスで一世を風靡した「摩拝単車(モバイク)」を2018年に買収したことは連載1回目で触れた。買収額は37億ドル(株式27億ドル、債務肩代わり10億ドル)にのぼった。モバイクの車両の減価償却費や出資価値の減損で、美団の18年度赤字決算の要因の一つとなった。

しかし、美団点評の王興CEO(最高経営責任者)は19年7~9月期決算発表会で「シェア自転車は、2020年の中核的な投資対象の一つだ。すでに、車両の設計を改良し、サプライチェーンも整えた」と今後の事業の柱に据えることを宣言してみせた。美団の狙いはどこにあるのだろうか?
シェアリング・エコノミーは、モノやサービス、場所などを、多くの人と共有・交換して利用する社会的な仕組みだ。スマホの普及が起爆剤となって、2010年台から米国で、配車サービス「Uber」(ウーバー)や民泊サービス「Airbnb(エアビーアンドビー)」などのプラットフォームが生まれた。中国でも配車サービスの滴滴出行(ディディ)の前身企業が12年に、14年にはシェア自転車のofo(オフォ)が設立されるなど、シェアエコノミーが台頭。15年設立のモバイクもそうした中国シェアエコノミーの代表選手に数えられた。
どこからでも乗れて、乗り捨て自由の便利さで、あっと言う間に普及した中国でのシェア自転車サービス。都市における慢性的な交通渋滞の改善や、市民の健康志向にフィットしたことも大きい。17年には、70以上の企業がこの事業に参入したとされる。
しかし、17年の冬に入ると、街中の利用者数が目に見えて減少した。「寒さが原因で、春になって暖かくなれば、再び利用が盛り上がるのではないか」との声も聞かれたが、18年の春になっても、低迷したままだった。代わりに目についたのは、乗る気にならない汚れた車両や、壊れたまま放置された車両だった。事業者は次々に倒産、モバイクも経営難に陥った。
失速の原因について、『共享単車』(2017年、広東人民出版社)では、次の8点を挙げている。
- 違法駐車、違法な走行など、都市の交通管理の問題
- 車両の破壊行為
- 車両の耐久性が低く、短期間での入れ替えが継続的に必要。減価償却費がどんどん増えていく
- 乗り捨てた車輌を、需要に応じて再配置するための人件費
- 流行に乗って使い始めたユーザーがサービスに飽きてしまった
- 至る所に「シェアリング・エコノミー」の文字があふれていて、中にはいかがわしいものもあり、資源の有効活用という経済・社会的な意義が曖昧になってしまった
- 参入した事業者間で、同様のサービスが展開され、量を確保するための体力勝負になってしまった。ユーザーに付加価値あるサービスが開発されていない
- ブームに乗って多くの起業家が参入したが、収益化に向けたビジネスモデルを描けていない
17年春先にシェア自転車がブレイクした頃には、「シェア自転車は、(中国の国民の)素質を映し出す鏡になるだろう」との言い方もされていた。誰もがルールを守って自転車を利用すると期待されてのことだ。現実は「毎月1%の車両が盗難されるか壊れた」(羅龍網[物流・サプライチェーンの研究機関]の調査による)。
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