2010年に共同購入サイトの運営からスタートした美団点評。香港取引所に株式を上場した18年も赤字だった。そんな同社が初めて黒字転換したのが創業10年目にあたる19年。利用者が増えるほど価値が高まるプラットフォームの「ネットワーク効果」を引き出すことに成功したのだ。
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- 3回目シェア自転車の「モバイク」、美団買収で“復活”
美団は10年の設立以来、9期連続で赤字決算だった。フードデリバリーの配達員の確保にかかる人件費や飲食店向け経営支援のIT(情報技術)投資が先行してきたからだ。
18年12月期には1155億元(約1兆7000億円)の最終赤字を計上した。香港取引所に上場した際に発行した優先株の買い取りに要する費用が主要因とはいえ、事業性の赤字幅も85億元あまりあった。

そんな美団に転機が訪れたのは19年4~6月期決算。最終損益は約8億8000万元の黒字に転換。同7~9月期も13億3000万元の黒字だった。
なぜ、美団は黒字転換に成功できたのだろうか。
まず、それまでの赤字要因を探ると、次の2点に集約される。
1つは販売費。主要事業であるフードデリバリーは、飲食店から顧客まで料理を送り届ける配達員が生命線だ。美団の公表値によると、美団のデリバリーで収入を得ている配達員は、18年で270万人。前年から50万人増加している。その77%は1980年代、90年代生まれの農村出身者だ。大卒者も15%いる。1日当たりの配達時間は4時間以下が52%、4時間から8時間が39%とのことだ。
配達員を安定して確保・増員するために、美団は、割合にして少なくない手当(補助金)を支払っている。具体的に見てみよう。
仮に、ある消費者が20元のフードデリバリーをオーダーしたとしよう。飲食店、配送員と美団の取り分は、おおよそ「飲食店:11元、配送員:4元、美団:5元」となる。しかし、美団は5元の取り分から、1~2元の補助金を、悪天候など様々な名目で、配送員に支払っている。美団の報告によると、配送員の3割は、月収5000元以上とのことで、大卒の平均給与にほぼ匹敵する。
同様に、顧客(消費者)や飲食店の開拓にも、クーポンを配るなど、販売費を投入してきた。
もう1つの赤字要因が、18年に買収したシェア自転車「モバイク(摩拝単車)」事業。飲食を中心に生活総合プラットフォームを形成する美団が次の成長領域としてモビリティー(移動)サービスに目を付けたのは今回の連載の1回目で述べた通りだが、いかんせん競争激化で体力がなくなっていたモバイクだ。美団は18年12月期に45億5000万元の減損処理を施し、「負の遺産」を整理した。
美団が19年4~6月期から黒字転換できた要因は、利用者が増えるほど価値が高まるプラットフォームの「ネットワーク効果」で説明できる。
フードデリバリー市場における美団のシェアを見ると、ライバルの「餓了麼」を引き離していることが分かる。
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