最低賃金引き上げなどを主張する小西美術工芸社のデービッド・アトキンソン社長と、働き方改革に情熱を注いできた味の素の西井孝明社長が、「生産性」をテーマに語り尽くす。シリーズ第6回は、「大企業」についての思い込みを払しょくする。大企業で働いている人は全体の13%に過ぎず、日本の実態は中小以下の企業の国。そこから見えてくる成長へのシナリオは?
※本シリーズは2019年11月18日開催の日経ビジネス Raise LIVEを収録・編集したものです
大竹剛(日経ビジネス編集):引き続き、会場の皆さんから質問を受け付けます。次の方どうぞ。
税制優遇と最低賃金引き上げで中小企業の統廃合を
アトキンソンさんは、360万社ある中小企業の統廃合を進めるべきだと主張されていますが、どうやって進めるのでしょうか。
デービッド・アトキンソン氏(小西美術工芸社社長、以下、アトキンソン氏):まず、人口減少なども反映して、ピーク時から100万社ほどなくなっています。既に、大きく減っているので、この先も今までの減少傾向は続くということは、まず理解する必要があります。
その上で私としては、人口減少と後継ぎ不在問題によって、自然に減っていくプロセスの中で、人材を抱えたまま倒産・廃業をすると無駄が生じます。倒産によって失業者が出て、再び仕事を探してもらうのは大変ですから。したがって国策としては、倒産しそうな企業は丸ごとどこかの企業に買ってもらえるような後押しをして、経済的なダメージを小さく抑えるべきだと思います。

1965年、英国生まれ。1990年来日。ゴールドマン・サックス証券金融調査室長として日本の不良債権の実態を暴くリポートを発表。2007年退社し2009年に国宝・重要文化財の補修を手掛ける小西美術工芸社に入社、2011年社長に就任。『デービッド・アトキンソン新・観光立国論』『日本人の勝算:人口減少×高齢化×資本主義』(ともに東洋経済新報社)など著書多数(写真:北山宏一)
政府は、税制などを合併を後押しするような形に持っていくと同時に、経営者に危機感を持ってもらうように最低賃金を毎年引き上げていくのがいいと思います。最低賃金を引き上げていくと、先ほど西井さんがおっしゃったように、海外に事業を展開しなければならないから企業規模を大きくする必要があると経営者が考えるようになったり、逆にもうやっていけないと諦めたりすると思います。
ただ、私が申し上げているのは、そのような変化を一気に起こせというのではなく、毎年引き上げていくことで徐々に合併を進めるという話です。これまで30年間ぐらいで悪化し、極めて非効率になってしまった日本の産業構造を、2~3年という短期間ではなく、再び20~30年をかけて効率化していけばいいと思います。
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