最低賃金引き上げなどを主張する小西美術工芸社のデービッド・アトキンソン社長と、働き方改革に情熱を注いできた味の素の西井孝明社長が、「生産性」をテーマに語り尽くす。シリーズ第2回は、西井氏が2008年に20年ぶりに冷凍ギョーザを値上げした真相から、「値上げはできない」という思い込みを打ち砕く。
※本シリーズは2019年11月18日開催の日経ビジネス Raise LIVEを収録・編集したものです
大竹剛(日経ビジネス編集):アトキンソンさんは「高品質低価格は罪」だと言います。価格競争が激しい消費財を扱う立場として、西井さんにとってはなかなか耳の痛い指摘ではないでしょうか。西井さんは、2008年になぜ、値上げをできたのですか。
西井孝明氏(味の素社長):これは経営者の言い訳ですが、先ほど規制緩和の話がありましたが、雇用分野の規制緩和に加えて、1990年代の大規模小売店舗立地法の規制緩和の影響があります。これによって小売業の競争が一気に加速したんです。ここから大きな店舗が増えて、今でも実はスーパーマーケットの数は増え続けています。
私が2008年になぜギョーザの値段を上げたかというと、過去10年間の販売価格をレビューしたんです。それまで、まともにレビューしてなかったんですよ。10年間、どのようにして味の素の冷凍食品が伸びてきたのか、その背景を全てレビューしました。味の素のギョーザはもちろんですが、競合製品やギョーザ以外の冷凍食品、さらには、冷凍商品以外のチルドのギョーザ、あるいはスーパーマーケットで焼いて売っているギョーザ、さらには手作りでギョーザを作ったらいくらかかるのかといったことまで調べました。そうしたら、冷凍食品のギョーザだけが値段が安くなっていたんです。

1959年生まれ。78年奈良県立畝傍高等学校を卒業後、同志社大学文学部に入学。82年、同志社大学を卒業し、味の素に入社。営業やマーケティング、人事などを担当。2004年に味の素冷凍食品に出向し、取締役に就任。当時不振事業だった家庭用冷凍食品の業績を改善。09年には本社人事部長を務め、11年に執行役員に就任する。13年にはブラジル味の素社長に就任。15年に創業家を除いて、歴代最年少となる55歳で味の素社長に就任(写真:北山宏一、以下同)
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