「マジックワード」が同時代の空気を増幅する

 激動トラップが作動するメカニズムは、第1章で論じた「飛び道具トラップ」のメカニズムと相似形にあります。飛び道具トラップと同様に、激動トラップが作動する背景には「同時代の空気」があります。本章で検証した事例でいえば、「情報化」「ネットワーク化」「エコロジー」といったメガトレンドが同時代の空気を醸成します。

 同時代の空気に「激動」の火を付けて増幅するのが、同時代のノイズです。激動トラップの場合、それはしばしば「マジックワード」として現れます。

 マジックワードとは、ある製品や技術が世の中に大きなインパクトを与える根拠として使用される言葉です。自動運転が過剰な期待を集めるのは、それがAI(人工知能) やIoT(モノのインターネット) といった現時点で横綱級のマジックワードと結び付くからです。3Dプリンターがブームになったときは、「第4次産業革命」というマジックワードが「激動感」を大いに増幅しました。

 第1章で考察したように、飛び道具トラップは、特定の経営ツールや施策が成功事例の論理文脈から引き剥がされ、同時代の人々に万能の「ベストプラクティス」として認識されることによって生じます。これと同じように、人々の注意や関心が特定の要素(製品や技術や市場変化)に集中し、それがマジックワードと結び付いたときに激動トラップが作動します。

 既に見たように、ビジュアルインパクトの強い製品が激動トラップを誘発しやすいのは、それが見た目一発で広範な人々の強い興味を引くからです。セグウェイは「モビリティーを変える」、グーグルグラスは「コミュニケーションを変える」、ランドロイドは「家事から人間を解放する」というように、実際の価値や実現可能性を軽視した思い込みが生まれます。

「特定の要素」への注目が先行するあまり、それがもともと埋め込まれていた文脈から切り離されてしまう。この「文脈剥離」に激動トラップの核心があります。

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