「インダストリー4.0」は幻想か

 「インダストリー4.0」というキーワードは、2015年にブームとなりました。インダストリー4.0は2011年にドイツが提唱した政策構想で、2014年ごろから日本でも注目されるようになりました。

 インダストリー1.0が18世紀の蒸気機関の発明による工業の発達、2.0が電力の普及による大量生産の実現、3.0が1970年代から本格化したコンピューターの活用による生産の自動化、という時代区分です。来るべきインダストリー4.0は製造業のさらなるデジタル化です。インターフェースの標準化を進め、工場や生産設備、製造機器をIoT(モノのインターネット)でつなぎ、大企業だけでなく中小企業も含めて国全体をひとつの「スマートファクトリー」にするという構想でした。

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 2015年、世界は久々の「産業革命」を目の当たりにする。自動車業界の頂点に立つトヨタ自動車がIT(情報技術)企業の下請けになり、日本が得意のモノ作りでインドにあっさり抜かれる──。企業や国の序列が至る所で逆転し始めるのだ。歴史をひもとけば、このような革命は今回が4度目に当たる。

(出所:日経ビジネス 2015年1月5日号 特集「日本を脅かす第4次産業革命 日独印、次の勝者は誰だ」)

 「第4の産業革命が始まる」というメッセージは、製造業だけでなく、広範な人々の注目を引きつけました。それにしても、タイムマシンで近過去に旅していると、いつの時代も何かしらの「産業革命」が進行中なのが面白いところです。

 前回取り上げた3Dプリンターのブームも「産業革命」という文脈で語られました。オリンピックですら4年に1回なのに、「産業革命」は毎年のように起きている――。これはどういうことでしょうか。革命は定義からして非連続な現象です。非連続は連続しません。産業革命の毎年開催は無理な話です。

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