電気自動車の普及は、値段の高さと技術的な障壁が大きい。燃料電池自動車についても同じように、費用と技術の問題がある。電気自動車・燃料電池自動車の普及には、充電設備などの市中における普及・整備が必要であり、ここには政府の政策介入が重要となる。また、天然ガス、充電設備、燃料電池充填設備(水素ステーション)のいずれに重点を置いて援助していくかという、政策判断も必要となってくる。
電力市場――寡占・独占市場
電気自動車に乗っている分には、排ガスも発生せず、地球温暖化抑制に大いに役に立っているように思える。しかし、そのエネルギー源である電気が、効率の悪い石炭火力で発電されているようであれば、その抑制効果は大幅に減ってしまうだろう。
電力化は多くの場合、二酸化炭素排出量の削減につながる。しかし当然ながら、発電方法によりその効果は異なる。単純に言ってしまえば、再生可能エネルギーで発電すれば、発電による二酸化炭素の発生はおこらない。
だが、発電を全て再生可能エネルギーでというのは現時点ではほぼ無理なのである。何より、再生可能エネルギーは天候に非常に左右される。そして、電力需要も天候に左右される。そしてその需給のタイミングの違いは、誰でも簡単に想像できる。
電灯をつけるのは太陽の出ていない夜であり、暖房をつけるのも天候の悪いときが多い。日時、季節、需給のバランスを取るためには、必要なときに発電できることが重要である。原子力は天候に左右されずに一定量を発電するには最適だが、突然の猛暑で電力需要が高まる時にその需要に応じて発電量を増やすことはできない。
この点では化石燃料、特にガス火力発電の柔軟性に軍配が上がる。では、なぜ、石炭火力のように、ガスに比べると効率が悪く、また、二酸化炭素排出量の大きい発電設備がいまだに存在するのであろうか?
最大の要因は、歴史的に石炭が安かったことである。米国では、シェールガス革命以来天然ガスの方が安いのだが、ガス生産国を除き、エネルギーあたりでは石炭の価格が最も安いことが多い。
さらに石炭の二酸化炭素排出が問題視されているため、排出量取引が実施されている欧州では天然ガスに競争力がある。その結果、それ以外の国では需要が低くなっている石炭の価格が相対的に低下しており、価格面での競争力が増しているのである。
また忘れてはいけない重要な点として、すでに温暖化問題が深刻に取り上げられる以前に建てられた石炭火力発電所が、数多く存在していることがある。
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