
あっという間に、この講座も8回目となり、最終回を迎えることになった。連載の進行と同時に新型コロナウイルスの感染が日ごとに拡大していき、本稿も当初書こうと予定していたことをだいぶ変更することにもなった。とはいえ大きな変化を迎える中でのテクノロジービジネスとの付き合い方について考える、という、本質は変わらない。ここまで書いてきたことを少し振り返りながら、まとめていこうと思う。
本連載で繰り返し強調してきたのは、デジタルトランスフォーメーション(DX)にしても、オープンイノベーション、ベンチャー投資にしても、国外のテクノロジーの進歩に常にアンテナを張って正しい目利きをしなければあっという間に競争から脱落していくという点である。
「級数的な広がり」が日常となる世界
そもそも人間は、今回の新型コロナウイルスのような「級数的な広がり」を直感的に捉えることが苦手だ(そのために対数グラフがあるのだが……)。新しいテクノロジービジネスも「ネットワーク効果」により級数的に広がっていくため、想像以上に速いペースで成長し、20年しかたっていないベンチャーが創立100年の世界的な大企業の時価総額を追い越してしまうようことが起こる。
潜伏期間が2週間あることも、感染の因果関係を追跡することを難しくしている原因だが、これも新しいテクノロジーの導入とも共通しているだろう。最先端のテクノロジーは、研究者や一部のビジネスの最先端を把握する人にとってはいち早く常識になるが、これが情報感度がごく一般的なビジネスパーソンまで届き理解されるには、インターネットが発達した今でさえもタイムラグがある。
そして、ビジネスメディアで真っ先に取り上げられるのは「分かりやすく、誤解されたデマ」(例えばAI=人工知能を導入すれば、簡単にコストが削減できる、といった安易な見解)の方が速度が速く伝わるため、本質を見失った「最新テクノロジーを用いた概念実証(Proof of Concept)」により、理解する前に失望して、AIの本格導入を断念してしまう。
この記事は会員登録で続きをご覧いただけます
残り2119文字 / 全文2996文字
-
「おすすめ」月額プランは初月無料
今すぐ会員登録(無料・有料) -
会員の方はこちら
ログイン
日経ビジネス電子版有料会員なら
人気コラム、特集…すべての記事が読み放題
ウェビナー日経ビジネスLIVEにも参加し放題
バックナンバー11年分が読み放題
この記事はシリーズ「文系にも分かる 最新テクノロジービジネス講座」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。
Powered by リゾーム?