感染者数や死亡者数が取り上げられがちだが、そもそも100%正しく見つけられる検査などほぼありえない。島津製作所は、新規開発した新型コロナ検査キットの性能検証において「陽性一致率、陰性一致率はいずれも100%」とプレスリリースで公表している。

 しかし、これはあくまで「PCR検査の結果との一致」であり、「真に感染しているかどうかとの一致」ではない。国立感染症研究所の定めた評価方法を読んでいれば誤解することはないのかもしれないが、そこまでする人ばかりではないので誤解する人が続出した。
 精度を問うときに、何と何を比べての精度なのか考える癖をつけることが必要だ。できるならば、下の表がすぐ頭に浮かぶようであってほしい。

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 検査において一般的に「精度」という話を理解するときに、基本的にはこの表の中の感度、特異度が高いことに意味がある。

 (正確度[accuracyの日本語訳、精度とも言う]=[真陽性+真陰性]/全体の合計であるが、実際は以下のケースのように、99.5%の正確度[精度]であっても陽性については判断ができないことになってしまう)

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 感度、特異度の2つが大事だが、これを同時に高くすることはできない。場合によってどちらを優先させるかを決めなければならない。例えば、がんであれば、見逃してしまうと治療することなく早期進行して死に至ってしまうので、感度を優先しなければならない。新型コロナウイルスの場合はバランスが難しい。

 感度はクラスターを見つけるためには大事なのだが、感染者を発見したとしても、今のところ、治療方法がない(人工呼吸器はあくまでも延命であり、急回復できる治療ではない)。特異度が高いとしても、自分は陰性だから大丈夫と外を出歩くことで感染のリスクが増えてしまう。意味があるとすれば医療現場の従事者を検査し、陰性でなければ働けないような場合だろう。

 初期の頃に検査が症状の出始めている人に集中し、今もなかなか検査をしてもらえないのはこのためだ。例えば、PCR検査の感度を70%、特異度を99%として考えてみよう。

 東京都内の4月15日の累計感染判明者数(ここでは従来のPCR検査で陽性の数、とする)は約2500人である。東京都の約1400万人の人口からすると0.02%でしかない。現在の判明者数よりも大きく見積もってたとえ10倍の2万5000人を真の感染者としていたとしても、0.2%である。(非感染者は1397万5000人となる)

 この情報を元に先程の表で考えると、陽性と出た人の中で、陽性反応が出て実際に感染している人の比率(陽性適中率)17500/(17500+139750)=11.1%である。

 検査の感度が良くても、検査対象の母集団の中で実際に感染している率が低い状態では、偽陽性が大量に紛れ込んでしまう。これでは結果のデータを使って対策を立てて行動することには、つながりにくい。

陽性かつ本当の感染者1人の発見に800万円

 また、単純に計算してみると、1400万人÷1万7500人(真の陽性)=800人を検査してようやく1人本当の感染者を見つけることができる(1人見つけるために、1人あたり1万円の費用として800万円かかり、2時間の待ち時間が発生するなら、800人を拘束する負担は大きい)。

 これを、37.5度以上の熱を4日以上出していたり、だるさや息苦しさの症状が既に発生したりしている人などに限定してみよう。症状がみられる人の8割の人(説明のための仮定の数字)が実際に新型コロナウイルスに感染しているとする。

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