生涯年収や、過去の延長線上で未来が読める時代は平成で終わった。新しい時代、どの大手企業も危機感を持って動いているのは確かだ。

 もしこれからのキャリアを考えていくならば、バンテージポイントから時代を俯瞰(ふかん)してみる視点を身につける必要がある。普通は役員レベルでようやく身につく視点だが、大企業の同質社会の中で過ごしていると、そこまでのキャリアに上り詰めるまでに長い時間がかかってしまう。

 ではどうすべきか。この10年でビジネスモデルが激しく変わっていくような混沌としたビジネス環境にいるからこそ、見晴らしの良さを保ちながら、多くの異業種に信頼できる知り合いがいて話が聞けることは、大きな強みになるだろう。

 多くの業界のトップ層と率直に意見を交わせるネットワークを構築することによって、業界内だけでは気づけない自分の相対的な強み、弱みが見えてくる。米国の心理学者ジョセフ・フルト氏とハリントン・インガム氏が提唱したジョハリの窓ではないが、自分で分かっている自分は、自分のごく一部にすぎない。他人から自分がどう見えているかは貴重な気づきを与えてくれる。他人に指摘される強みや弱みというのは意外なことが多いが、的を射ていることも多い。

 特に違った業界、違った国の人に会ってみて、指摘されていることに共通していることがあるならば、なおさらだ。天職は自分で探すだけでなく、他の人が薦めてくれることも多い。それもあって、「この人でなければ」とスカウトされることを目指して、普段から自分の価値観、目標、能力を分かりやすい形で他人に知っておいてもらうというのは大事だ。 

需要が続くオンリーワンに

 ただ気をつけなければならないのは、「この人でなければ」というのは意外とニッチな分野では簡単であるということだ。その一方で、呼ばれる分野が持続的に需要が拡大する分野でなければならない。

 例えば、自分にタグ(札)を複数つけて社会にアピールしていけば、意外と日本でただ一人という属性には簡単になれる。これは単純な「掛け算」だ。例えば、30代で女性で、四年制大学の理系学部を卒業し、高級小売業界の経験があって、店舗運営やテクノロジー(D2C Direct to Consumer 消費者直接販売、人工知能、シェアリングエコノミー)に詳しいというだけでも恐らく日本で一人ぐらいしかいないだろう。

 いわゆるニッチな分野だ。しかし、戦況が変わるとき、例えばアップルは小売店舗を強化する際に、高級ブランドのルイ・ヴィトン率いるLVMHの創業者からアドバイスを得て、同業界から人材を招き入れた。この様な状況のときこそ、そういった人材への需要が高くなる。

 ただ、大事なのはこれが持続的な需要なのかどうかだ。経営の視点ではなく、30代という点に需要があるのであれば、自分が30代ではなくなったり、似たスキルを持った30代が新たに現れたりすることによって供給過多となり、自分への需要が減る。

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