前回は「淘宝網(タオバオ)」を中心とするネット通販事業の基盤を築いたアリババ集団の創業初期の歴史を振り返った。では、それ以降は、どんなステップを踏んで発展してきたのか。アリババはもはや単なるEC(電子商取引)企業ではない。データを軸としたテック企業へと脱皮しつつある。

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第1回1日に4兆円!「独身の日」から読み解くアリババの技術戦略
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第3回「タオバオ誕生の舞台裏、アリババ戦略変遷史(上)」

 EC事業で収益基盤を築いたアリババ。次に乗り出したのが、中小企業へのビジネスインフラの提供だ。中国において中小・零細企業は、政府系企業などと比較して、市場開拓のチャネルや情報、資金、物流などの課題を抱えていた。アリババは、これら中小・零細企業のための、決済や物流などビジネスインフラを自ら投資して構築。様々なビジネス領域において「取引相手が見つかる」「料金回収リスクを軽減できる」「商品を届けられる」といった仕組みをパートナーに提供して、彼らの事業機会を創出した。集客力とビジネスインフラとを提供することで、企業のアリババ・プラットフォームへの依存度を高めたのだ。

アリババは民営物流会社などと共同で物流基盤を提供するビジネスを展開(写真:ユニフォトプレス)
アリババは民営物流会社などと共同で物流基盤を提供するビジネスを展開(写真:ユニフォトプレス)

 もっとも、この第2段階は、事業環境の変化に促されて取り組んだ面もある。

 背中を押したのは、スマートフォンの普及だ。スマホを手にした消費者の情報処理能力が飛躍的に高まったことを受け、消費者はあらゆるサービスをスマホで受け取りたがるようになった。こうなると、それまでEC事業の「一点突破」で成長してきたアリババは、対話アプリとゲームを主軸にしていた中国の騰訊控股(テンセント)などライバルも意識せざるを得なくなる。「消費者接点を巡るプラットフォーム間の競争」が本格化したため、アリババは中小・零細企業に活路を見いだしたのだ。

 「テンセントに見る競争優位構築のメカニズム」で解説したように、テンセントも2010年代前半にエコシステム型企業への戦略転換を図っている。それまで「人と人とをつなぐ」ことがテンセント・プラットフォームの中心機能だったが、顧客基盤を生かして「人と企業をつなぐ」機能を強化。戦略転換の中核を担ったのが、13年にスマホ向けにリリースした決済ツール「WeChat Pay」(中国語名:微信支付)だった。

 アリババも、「アリペイのモバイル対応」を進め、プラットフォーム上を行きかう大量のデータを分析して信用体系づくりに乗り出した。アリババは様々なプレーヤーがつながる環境をつくり、「エコシステムの構築」に本格的に乗り出したわけだ。発展の第3段階だ。

 ここで大事なのが、オープン化戦略。様々なデータを集めるには、様々なプレーヤーが必要だ。プラットフォームをオープン化して、エコシステムの拡大を進めてきた。

 この過程で、アリババは、クラウドコンピューティングやビッグデータ解析、AI(人工知能)といった新しいテクノロジーの開発に力を入れている。集めたデータの価値を高める道具をそろえたのだ。アリババはネット上で商品を販売するEC企業から「テクノロジーに立脚」する企業への脱皮を図ったわけだ。

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