1999年に創業し、2014年に米ニューヨーク証券取引所への上場を果たしたアリババ集団。時価総額は日本円で約60兆円と、世界トップ10圏内だ。日本企業でトップのトヨタ自動車(約25兆円)をも大きく上回るが、そもそも、なぜ、アリババはここまで強くなれたのか。戦略の変遷を2回に分けて振り返る。初回は、アリババのネット通販事業の基盤となっている「淘宝網(タオバオ)」誕生の舞台裏を探った。
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- 第1回1日に4兆円!「独身の日」から読み解くアリババの技術戦略
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- 第2回「ECだけじゃない、アリババ金融帝国の実力」
まずは2019年3月期通期の決算資料を基にアリババの事業構成について、おさらいしておこう。
売上高は3768億4400万元(約5兆7000億円)。前の期から51%増やしている。買収した事業による影響を除いても伸び率は39%に達する。
セグメント別に詳しく見ると、「淘宝網(タオバオ)」や「天猫(TMALL)」などのコア・コマース(ネット通販事業)が3234億元と全体の売り上げの86%を占めている。中国の小売市場におけるアリババの流通総額(GMV)は前の期比19%増の5兆7270億元と過去最高を更新しており、競争が激しくなる中でも着実に取引量を増やしていることが分かる。19年3月末のネット通販の国内ユーザー数は6億5400万人。1年前と比べて約2割増やしていることも見逃せない。
このネット通販事業をベースロードに、アリババは新たな収益の柱づくりに励んでいる。「阿里雲」のブランド名で展開するクラウドコンピューティング、「土豆」や「YOUKU(優酷)」といった動画配信サービスにゲームなどを加えたデジタルメディア&エンターテインメント、地図データの「高徳」やリナックスベースのOS(基本ソフト)「YunOS(雲OS)」などからなる新規事業(アリババのセグメントではInnovation Initiatives and others)の3つが成長領域に位置付けられる。
上の表では各部門の売上高を記したが、営業損益を見ると、コア・コマース(1093億元の黒字)以外は赤字だ。赤字額は、クラウドコンピューティングで55億元、デジタルメディア&エンターテインメントは200億元、新規事業が117億元となっている。ネット通販で上げた利益を元手に、成長領域に先行投資していることが分かる。
ここからは、アリババがどのように事業範囲を広げてきたのかを見ていこう。
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