世界的に名の知れた経営者、馬雲(ジャック・マー)氏が創業し、中国のネット通販市場で圧倒的な存在感を誇るアリババ集団。例年、11月11日の「独身の日」に実施する大規模セールは、今や中国を代表するイベントの1つといっても過言ではないだろう。2019年の独身の日の取引額(流通総額)は日本円でざっと4兆円。それを大きなシステムトラブルもなくこなしてしまうアリババとは一体、何者なのか。

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 「GAFA、BATに次ぐ、第三極をつくっていきたい」。2019年11月18日、検索サービス「ヤフー」を展開するZホールディングス(HD)とLINEが開いた経営統合に関する記者会見。ZHDの川辺健太郎社長は、グーグルなどのGAFAと、百度(バイドゥ)などBATの米中プラットフォーマーへの対抗意識を隠さなかった。

 この日の会見では、インターネット産業が、優秀な人材やお金が国境をまたいで強いところに集約する「Winner takes all」のビジネス構造をもっていること、すでに時価総額、営業利益、研究開発などでケタ違いの差がついていることなどを、具体的な数値で示した。以下が、この日、使われた資料だ。

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 ここで、中国A社として紹介されているのがアリババである。ちなみに中国B社は騰訊控股(テンセント)を指す。

 アリババは「欲しいものが買えない」「お金を支払っても、商品が届くか不安」といった、中国の小売業界などにおける「困りごと」を解決しながら成長してきた企業だ。技術の進化、社会・経済環境に応じて、自らの役割を「EC事業者→企業に対するビジネスインフラ提供→エコシステム構築→データに基づく小売業、製造業、金融業の再構築」と変化させながら、今もなお成長を続けている。

 支えるのが技術力だ。築き上げてきたプラットフォームに集まる顧客やパートナー企業から生み出されるデータを活用。AI(人工知能)、ブロックチェーン、クラウド、ビッグデータ(合わせて「ABCD」と称される)など最新のテクノロジーを駆使しながら、価値のあるデータに変換し、新たなサービスをつくり出してきた。

 さらに開発した技術やデータをパートナー企業に提供する「オープン化戦略」を通じて、エコシステムの拡大・強化を図っている。

 このままでは中国プラットフォーマーの背中がどんどん遠くなっていく──。ZHDやLINEがそう危機感を抱くのも想像に難くない。

 では、アリババはどのようにして、技術の進化や社会・経済環境に応じて変化を遂げてきたのか。

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