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世界初の帝国、共通語も博物館も図書館もつくる

 エジプトより500年から800年ぐらい遅れ、メソポタミアでは、アッカド王サルゴンが初めて統一国家をつくり、世界初の帝国が誕生しました。歴史上で使われる帝国の定義にはいろいろありますが、ここではシンプルに「いろいろな言語を話す人を1つの国が治める」ということにしておきましょう。これが意味するものは、国を治めるための共通語が必要だということです。アッカド語が世界初の共通語(リンガ・フランカ)になりました。

 粘土板には、サルゴンの宮廷にはインダス川から持ち込んだ水牛が飼われていたという記録があります。大帝国の皇帝は周囲の世界を全部統一したらもうすることがない。だから「動物も植物も全部集めてやろう、昔の人間も全部子分にしよう」と動植物園や博物館、図書館をつくります。サルゴンから始まった世界帝国・世界帝王の理念の流れがルーヴル美術館であり大英博物館なのです。人間の考えることは昔も今も一緒です。

 その後、ナラム・シンという大王様が現れますが、ナラム・シンは生きている時に「俺は神やで」といった最初の王様です。全て集め尽くすと最後はそうなるんですね。王様は神であるという概念もこの時代のアッカド帝国に始まっています。

 エジプトは古王国という統一国家の時代が500年ぐらい続き、またいろいろ争乱の時代があって、次に中王国ができます。この中王国というのは日本の歴史ではあまり教えられていないのですが、実は歴史上では大変重要です。最近の学問で、地中海文明は中王国の影響をものすごく受けていることが分かってきたのです。

 例えば、地中海文明の始まりはクレタ文明(ミノア文明)ですね。クレタ文明を象徴するのは何かというとラビリンス(迷宮)ですが、中王国の王様を葬る葬祭殿は中庭が迷宮になっているのです。

 象徴的なものではホメロスの『イーリアス』という物語。そこにはトロイア勢の応援に来たエチオピアのメムノンという強い王様が登場するのですが、このモデルが中王国の王様のアメンエムハト3世らしいのです。何もないところにぱっと文明なんか起きるはずはなくて、全部つながっていると考えたら当たり前のことですよね。

 そして、だいぶ遅れてこの頃(B.C.2000年ごろ)、中国でも文明が始まり、二里頭という文化が栄え始めました。出現した青銅器などからこれが伝説の中国最古の王朝「夏」ではないかといわれています。しかし文字がないので確認できません。