経営者を取材していると、しばしば強烈な信仰心に遭遇する。得度した京セラ創業者の稲盛和夫氏のように、仏教やキリスト教などの宗教に帰依する人もいるが、どちらかというと独自の信仰対象を持っていることが多い。

 私欲だけでは従業員をまとめ上げることはできない。もっといい会社をつくりたい、経営者としてもっと成長したいというストイックな側面を強めた経営者が、自らを省みる信仰対象を持つことは自然だ。本当の悩みは幹部にもなかなか吐露できないので、心の支えも必要だろう。

 時代の転換点を迎え、経営者には今後、難しい判断が求められる局面が続く。そんなときには、祈ってみてはどうだろう。決して冗談で言っているのではないことは、本特集で紹介する経営者たちの「信仰の現場」を見ればお分かりいただけるはずだ。


(写真/PIXTA)
<特集全体の目次>
●松下幸之助を支えた信仰「宇宙根源の力」
●フォーバル大久保会長、太陽と月に毎日祈って30年
●毎朝、水風呂で『大断言』を唱える経営者
●ラッキーピエログループ・王会長「3つの神に信念を誓う」
 アクト・伊藤社長「通勤中に車内で詩を発話」(この記事の2ページ目)
 アサヒ・ドリーム・クリエイト 橋本社長「毎月欠かさず、往復7時間の墓参り」(この記事の3ページ目)
●「初辰まいり」で毎月、業績報告
●1日3回、元禄時代からの先祖の名を読み上げる
●築地本願寺の改革を先導した、安永宗務長の経営者観

お客様の幸せと、
スタッフの幸せのために
頑張ります

ラッキーピエログループ 王 一郎会長
1942年兵庫県生まれ。中華料理店での修業などを経て87年、北海道・函館のベイエリアに「ラッキーピエロ」1号店を開業、社長に就任。2018年娘の未来氏に社長を譲り、会長に就任

 函館エリアの17拠点でハンバーガー店を営むラッキーピエログループ。王一郎会長は、約30年前から自宅の玄関を入ってすぐ右側の場所に、中国の財運の神(写真左)、長寿の神(写真中央)、幸福の神(写真右)の銅像を置いている。

 財運の神は、会社が発展し、家族が財を成すこと、長寿の神は、家族やスタッフが長寿であること、幸福の神は、家族やスタッフ、お客、地域の人が幸せになることをそれぞれ叶えるためのものだ。

 その銅像の前で毎朝出かける前と帰ってきたとき、「おはようございます(ただいま帰りました)。お客様の幸せとスタッフの幸せのために頑張ります。地域貢献をしっかりやります」と王会長は合掌しながら唱える。「言葉は形になる。潜在意識にすり込むことが大切」との考えによるものだ。

 この決意で王会長はコロナ禍でも全店で営業した。理由は2つ。1つは「最高の料理を提供する」とのスタッフの使命感を保つため。2つ目は料理を食べ、「生きていてよかった」とお客に思ってもらうためだ。その結果、2020年10、11月の月商は19年並みだった。

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