鋼材商社の天彦産業(大阪市)は従業員40人の小さな会社ながら、毎年3、4人の採用枠に100人前後の応募が殺到する。なぜ、今の若者に受け入れられるのか。その秘密を樋口友夫社長が語る。

ADVICE
大学で教壇にも立つ社長が明かす
今どきの学生が会社に期待すること

 時折、ご縁があって、私は関西の複数の大学で学生に講演する機会があります。就職先の選び方や採用側の視点、当社の取り組みなどを説明するのです。

 彼らと触れ合って分かったのですが、ブランドや高給に魅力を感じて大企業を希望する学生がいる一方で、働きがいを重視する学生が確実にいます。社員の働きをきちんと評価する会社にすれば、彼らに伝わります。「うちはどうせ中小企業だから」と新卒採用を諦めることはないのです。

 当社は2020年1月で創業145年です。兄が社長を務めていた16年前は多くの学生に就職したいと思われる会社ではありませんでした。しかし今では、東京や九州にある大学の学生からも応募があります。

 ただ、特別な採用戦略を取っているわけではありません。私が経営において大事だと考え、実践していることが結果的に今の若者にフィットしているのでしょう。

大学で講演することもある樋口社長。今どきの学生を評して、「全員が大企業志向なのではない」。中小企業でも採用はできるという

 その意味では当社の転機は05年でした。「社員第一主義」。5代目の社長に就任した私は、こんな経営理念を掲げました。当社は長い歴史の中で経営危機に何回も見舞われました。そうした事態を切り抜けて会社を成長させてきたのは社員であり、自分1人では何もできないと考えたからです。

 顧客を喜ばせる努力をするのは社員。その社員が本気で取り組むようにするには、まず会社を好きになってもらう必要がある。だから、社員第一主義はいろいろな仕組みに落とし込んでいます。

頑張っている人を社員全員で選ぶ「月間ベスト社員制度」(写真:行友重治)

 分かりやすいのが有給休暇を取りやすい風土づくりです。週休2日制の当社は年末年始など年間127日の休みに加えて、さまざまな有休も用意。配偶者も対象になる誕生日休暇、記念日に合わせるメモリアル休暇、さらには子供の学校行事などに出やすくする半日有休制度も設けました。有休消化率は上がり、18年度は75%に達しています。

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