沈黙も同調も駄目

 業態の開発・改善力が物語コーポレーションの強みである。成長のエンジンとなるもう1つの柱が人材力だ。そして、それらを支えるのが「意思決定」「自己開示」という行動原則、言い換えれば自由にものを言い合う議論文化である。

 実際、社員は物怖じせずに発言する。物語コーポレーションの場合、トップの鶴の一声で物事が決まることがまずない。「店の看板を変えよう」「商品をこう変えよう」「この味でいいのか」という話は、開発のプロセスでは終始起こる。そのときに1人の意見が通ってしまうことがない。毎回、議論を戦わせて決定している。

 だから会議では沈黙が許されない。黙っていたら注意される。それだけではない。例えば、トップが「少し味が濃いんじゃないか」と発言したとする。そのときに「社長のおっしゃる通りです」とはならない。

 というより、社長の意見をそのまま聞き入れることが許されない。仮に納得していたとしても、この会社では「同じ意見です」も認められない。なぜ同じ意見なのか、理由の説明を徹底的に求められる。理由はそれぞれ違うはず、と考えるからだ。

反対意見は大歓迎

 社員は、常に緊張した状態で会議に臨む。いつ意見を求められるか分からないので、ぼんやりしてなどいられない。自分ならどうするかを考え、常に頭をフル回転させておく必要があるのだ。

 そこまでやる理由は、経営者の独断で経営の舵を取られたら危険だと考えているからだ。だから一人一人に意見を求める。それは首尾一貫している。

 業態開発部門のトップである堀誠氏は「反対意見は大歓迎。開発は正解のない世界で答えを出さないといけない。『これがいい』と言っていても不安はある。時間がかかっても、議論を重ねて意見を出し切ることが業態開発をする上で最善の方法だと思う」。

 こうして異なる視点を持ち寄り意見を戦わせることで、結果として失敗の確率が低くなる。集客力のある業態づくりにつながるというわけだ。

 入社して1年半という羽入隆之広報・IR室室長兼成長戦略室統括マネジャーは当初、役職の上下関係なく、侃侃諤諤(かんかんがくがく)やり合う社風に驚いたという。「社員が行動原則を体現している。社員の会話の中でも『意思決定した?』『自己開示ができていないよ』といった言葉がよく出てくる」。

 普通の会社では、社長が「何でも言ってくれ。どんどん意見を聞かせてほしい」と促しても、もの申す社員は多くはないだろう。ましてトップに楯突く社員などいないはずだ。

 どうしたら何でも言い合える文化を醸成できるのか。その点をいろいろな角度から考えていこう。

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