今月の調査マン
東京商工リサーチ 情報本部情報部課長 増田和史
2003年東京商工リサーチ入社。情報本部で15年以上、企業倒産の取材や分析に携わる
金融機関は、融資先を事業性に基づいて評価する方向へ舵を切った(写真はイメージ)(写真:PIXTA)

 2019年11月に倒産したA社は、技術力に定評のある東京都内の老舗印刷会社だった。だが、近年は赤字決算が続いていた。ひっ迫した資金事情を好転させようと1年前、都心にある本社の土地・建物を売却。この土地・建物はメインバンクが抵当権を設定していたため、売却で借入金の負担はいくらか軽くなった。

 ところが、業績は好転せず、移転により業務に混乱が生じたとして、A社は民事再生法の適用申請を余儀なくされたという。

 債権者説明会でA社の社長はこう語った。「銀行の要請で本社の不動産を売却した。これにより、一部の機能を郊外の工場に移した結果、(都心部に多い)取引先への対応が疎かになった」。

 しかし、通信や交通のインフラが発達した現在、距離的な制約は工夫次第で解決できる。

 説明会で社長が本社売却にわざわざ言及したのは、債権回収を急いだ銀行に、虎の子の不動産を売らされた無念を伝えたかったためではないだろうか。

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