大工は多能工になる

建築に関わる多くの工程をほとんど内製化していると聞きます。ほとんどのハウスメーカーやゼネコンは各工程を外注しています。

秋元:うちでは、大工は現場監督もやる。いろんな仕事を任される。当然、多能工にならないとやれないが、それが面白い。

 売上高が同じ規模(平成建設の19年度売上高は約150億円)だったら、4倍の社員数がいるといわれるけど、多能工化しているから問題ない。

独特の経営が生む「質」で高級住宅を多数受注している(写真:廣瀬貴礼)
独特の経営が生む「質」で高級住宅を多数受注している(写真:廣瀬貴礼)

 それに、世の中には戸建てにもマンションにも高級住宅というものがある。規格化された建築ばかりする会社が増えたら、それを誰がやるの。

 うちは個人の住宅だったら大体平均で建築価格が5000万円くらい。億単位の家も普通だよ。そういう家の建築を受けられる企業がなければ世の中が困るでしょう。グッドデザイン賞も何回も取っているよ。

そういう市場を狙っているからむしろ大工を社員にして、内製にしたほうがいいと。

秋元:まあ、そうだな。創業してしばらくの間、アウトソーシングする比率を上げたほうがいいと、いろんな人によく言われたよ。内製は「絶対に失敗するからやめたほうがいい」ってね。まともな人たちほど、そう言うんだ。

 でも、俺は思った。「ああ、この人たちは、俺のまねを絶対にしないな」と。それにね、仕事が来なけりゃ、アウトソーシングしようがどうしようが潰れるんだよ。その一方で、この方法のほうがデザインにせよ品質にせよ、いいものを作れる。そう考えたんだ。

 そもそも大企業は資金力を生かして工業化できるけれど、中小企業はできないだろ。それなのに大手と似たようなビジネスモデルをやりたがるんだ。それじゃ、生産性で勝てるわけないじゃない。これが分からない中小企業のおやじたちがいっぱいいるんだよ。

リーダーは選挙で選ぶ

現場や事業を動かすリーダーを投票で選ぶと聞きましたが、どういう仕組みですか。

秋元:そうそう。課長とか部長という役職はあるけど、実際に現場や事業を動かすのはリーダーとかサブリーダー。それは投票で毎年選ぶことにしている。彼らが現場を動かすし、会議に出るのもリーダーだけ。部長とか課長という役職は資格に近いね。

 一番大事なのは現場では指導力。それに、人の配置や評価まで考えていく人事力などが問われる。投票で実力に応じて入れ替わるんだから仕方ない。まあでも、リーダーを外れても主席技術員といった立場になって、また現場で働くことになるから、そんなに腐ることもないよ。給料まで下げるようなことはしないし。

大工から他の仕事に移る人は多いのですか。

秋元:大工工事部から設計部に行っているのもいるし、リフォーム部に移った社員もいる。中には、うちで大工をやったけど向かないと思って、会社を辞めてまた大学に入ったのもいるよ。去年、その1人が東大の理Ⅲ(理科三類)に行ったよ。それでいいんだ。やりたいことをやるのが大事だ。

(この記事は、「日経トップリーダー」2021年1月号の記事を基に構成しました)

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