
この研修では中国事業の勉強をしつつ、現地の人と触れ合います。中国・上海に物語(上海)企業管理有限公司というグループ会社があり、社員はみんな中国人です。研修では物語上海の社員と1対1でまず向き合います。
これがものすごく緊張する。なぜなら日本語を話せない中国人と1時間程度、テーブルを共にしないといけないからです。初対面の人、言葉の通じない人に自分の気持ちをどのように伝えるかに重きを置いています。
参加者はみんな何とかして相手とコミュニケーションを取ろうと、翻訳アプリを使ってみたり、「ニイハオ」など知っている単語をしゃべってみたり。そのうち不思議と心が通じ合っていくようです。
あるときものすごく大きな声で話す中国人がいました。でもよく見たら、手が震えている。彼らも勇気を出して、自分の気持ちを伝えている。こうした経験を通じて、ここまで人に興味を持っていなかったなとか、自分のことを話していなかったなといったことに気がつくのです。
また、距離が縮まることで、それまでできなかった自己開示を自然と始めるようになるなど、帰国する頃には全員が確実に変わっています。
外国籍社員が体現
外国籍のインターナショナル社員も積極的に採用していますね。
2007年から採用しています。現在12カ国、102人。全社員の1割弱を占めます。彼らは日本人にはない視点や発想を持ち、物怖じせず率直に発言できる。当社に異文化を持ち込み、慎重で消極的な日本のカルチャーを活性化してくれることを期待しています。
実際、彼らはたくさん質問してきます。「どうしてこれをやるのですか」「これをしたら何があるのですか」と、納得するまで聞いてきます。我々は説明責任を果たさなければいけないので、相当鍛えられます。
その結果、議論の多様化が進み、会社も成熟するという好循環が生まれています。外国籍の社員は当社にとって欠かせない人材です。
ほかにはどんな取り組みがありますか。

我々の商売の根本理論をまとめた「物語の開発理論」と、業態ごとの「ブランドブック」を作成し、全社員に配布しています。ブランドブックは店のコンセプトやヒストリーをまとめたものです。これを読んで自分が働く業態について深く理解すれば、よりさまざまなアイデアが浮かんでくると思い、半年以上かけて作りました。
また、細かいことですが、メールで全社員に発信できるようになっています。言ってみれば、社員全員が参加する大きな会議室のようなもので、私に物申す社員も大勢いますよ。そういう場があることが大切なんだと思います。
朝礼もそうです。毎週月曜日、愛知県豊橋市の本社や東京、大阪、中国・上海などの拠点を中継で結んで、1時間みっちりやります。最初の約20分は、僕や執行役員以上の幹部が理念や自分の生き方など自由なテーマで話します。
その後の「反応タイム」では、社員が意見を言ったり、質問をしたりするのですが、みんな一斉に手を挙げるので、大抵予定通りに終わりません。
この記事は会員登録で続きをご覧いただけます
残り1763文字 / 全文3954文字
-
「おすすめ」月額プランは初月無料
今すぐ会員登録(無料・有料) -
会員の方はこちら
ログイン
日経ビジネス電子版有料会員なら
人気コラム、特集…すべての記事が読み放題
ウェビナー日経ビジネスLIVEにも参加し放題
バックナンバー11年分が読み放題
この記事はシリーズ「日経トップリーダー」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。
Powered by リゾーム?