CASE
説明会参加者が5人→630人に増加
学生に会社の将来を考えさせる理由
「以前は合同説明会に参加すると、ブースに3〜5人集まるだけで閑散としていたが、2017年から採用の方法を全面的に見直した。20年新卒入社では、説明会に合計630人(アンケート回収人数)を集められた」
うれしそうに話すのは、静岡市の金属加工会社、村田ボーリング技研の村田光生社長だ。
村田ボーリングは、セラミックなどの硬い素材を熱で溶かして金属の表面に吹き付け、摩耗に強くする溶射加工が主力。ここ数年は、リチウムイオン電池を製造する装置の部品など成長が期待できる業界からの受注が増えている。
こうした技術力や成長性があるにもかかわらず、従来は学生に情報をうまく伝えられなかった。
応募減で危機感持つ
大卒を毎年2〜4人採用してきたが、数年前から合同説明会のブースに訪れる人が激減し、新卒採用ゼロという年もあった。しかも、製造現場で必要な理系学生が地元ではなかなか集まらない。
「従来の採用を続けても改善は難しい」。村田社長は危機感を感じて採用活動を見直した。
村田社長が新しい採用活動で大事にしているのは、「学生のためになる採用」という視点を常に忘れないことだ。
人口減少で、会社が学生を選ぶというより、学生が会社を選ぶ傾向が強まっている。「社員とその家族を大事にしなければ、会社が生き残れなくなっているように、採用活動も、応募してくれた学生が自分のためになると感じるようなものでなければ、学生に集まってもらえなくなる」(村田社長)というわけだ。
村田社長がこうした考えを持つのは、『日本でいちばん大切にしたい会社』の著者として知られる元・法政大学大学院教授、坂本光司氏の影響が大きい。
坂本氏は静岡県出身。静岡市内に法政大学大学院が開設したサテライトキャンパスで講義をしていた。村田社長は13年から2年ほどそこに通い、「社員とその家族、さらには仕入れ先まで大事にする会社でないと、これからは生き残れない。社員満足を重視すべき」という事例を繰り返し学んだ。
坂本氏の元に大企業の幹部が通い、社員のための会社にするにはどうすべきかを相談していることも知り、時代の潮流が変わったことに気づいたという。
変化に気づく以前は、社員満足より顧客満足重視で、「納期に間に合わせるためには、社員の有給休暇はあまり取得してほしくないと考えるほうだった」と村田社長は振り返る。
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