原材料高や円安を背景に物価の上昇が顕著になり、企業に対する賃上げへの期待はますます高まっている。コロナ禍で停滞していた経済活動が回復するにつれて、以前から懸案だった人手不足はさらに厳しくなっており、賃上げできない企業は存続もおぼつかない時代に突入した。給料を上げて優秀な人材を確保し、成長へとつなげる。今年こそ、そんな好循環への一歩を踏み出そう。

(写真/PIXTA)
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<特集全体の目次>
・「社員に1円でも多く払いたい」と公言 横浜市のさくら住宅

・坂本光司氏「賃上げの追求は経営の目的の1つで間違いない」(1月5日公開)
・「増収増益増賃金」を実現するための7つのステップ(1月6日公開)

ケーススタディー
社員に1円でも多く払いたいと公言する

従業員数約40名のリフォーム業で高賃金サイクルを実現する。パートを含めた従業員に賃金や手当、法定外福利を手厚く用意し、従業員は工夫と熱意を武器に「値下げを一切しない」会社をつくる。

 鎌倉など神奈川県内に5店を展開するリフォーム業のさくら住宅(横浜市栄区)の創業者、二宮生憲(たかのり)相談役は、「社員の給与を1円でも多く払いたい」という、一般的には異色といえる目標を掲げている。

さくら住宅の本社。隣には、誰でも入れる無料のラウンジも設置している
さくら住宅の本社。隣には、誰でも入れる無料のラウンジも設置している

 このような方針の背景には、社員の仕事ぶりが顧客に評価され、価格競争などしなくても顧客に選ばれる会社を目指すという考え方がある。

 さくら住宅は1997年に二宮相談役が創業した。ここ数年は売上高10億円前後、従業員数約40人で推移している。会社の歴史が特別に長いわけでもなく、規模も決して大きくない。創業当初は新規店舗の出店資金も十分ではない状況だった。

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