ウェディングEVバス

 成都公共交通グループも面白い取り組みをしています。中国の結婚式は、挙式場とゲストの宿泊先間の移動は、新郎新婦が送迎車を手配する慣習があります。これは時に、数十台の小型乗用車を用意し、遠距離を送迎するケースが生じ、経済的にも環境的にも負担がかかる慣習となっていました。

 そこに問題意識を持った成都公共交通グループは、19年から「520路」という結婚式専用の電気自動車(EV)バス送迎サービスを開始しました。

 「520」は中国で「愛情」を意味する数字で(中国語の「愛している」を示す「我爱你〈ウォーアイニー〉」と発音が似ているため)、バスの装飾もお祝いの雰囲気を演出するかわいらしいものになっています。

 「カーボンニュートラルで見た目も個性的でクールだから、結婚式の送迎車はEVバスがいい!」と絶賛する声もあり、街中を走っている姿が注目を集めています。

 EVと言えば、中国で保有しているEVは21年6月時点で合計約600万台に上り、生産量および消費量は6年連続で世界一となっています。

 そんなEVにとってのボトルネックは「充電」です。僕自身も今年、EVで富士山に行った際、途中でバッテリーが切れそうになって困りました。仕方なく充電スタンドまで遠回りし、充電するのに1時間も待ちました。

 この充電問題を独自の手法で解決したのが、「奥動(オールトン)」でした。

20秒で「充電済み」と交換

 同社は充電サービスの代わりに、「BaaS(Battery as a Service)」という、交換ステーションで充電済みのバッテリーと入れ替えるビジネスを開始しました。自社開発の特許技術により、20秒でバッテリーの交換を可能にしているのが特徴です。

 中国の電池交換ステーションの数は21年6月時点で716カ所ですが、そのうちの約半数で同社のサービスが提供されています。

 このほか、近年は高速通信インフラおよびクラウドコンピューティングの急速な発展に伴い、ビッグデータの需要が急速に高まっています。その結果、膨大なデータセンターを維持するために使われている電力が、中国総消費電力の3%を超えるほどになりました。

 そんな中、中国のネットサービス大手テンセントは21年4月、データセンターの環境対応に関する社会責任を意識し、環境や食料、エネルギーなどを巡る社会課題の解決に500億元(約9000億円)を投じると発表しました。

 世界中でクラウドビジネスが席巻する現在、電力消費問題も見過ごすことはできません。

 数年前の中国なら、「脱炭素」といえば、「中国政府やメディアのキャッチフレーズにすぎないだろう」という見方が強かったのですが、今は経済活動や日常生活の中で密接に関わるようになっており、その効果も少しずつ実感できるようになってきました。

 個人的に気になる中国の「青空」も、近年は見る頻度が上がり、空気も澄んできている気がします。

 こうした変化は、中国企業が脱炭素の目標を実現するために創意工夫をしてこなければ、起きなかったと思っています。

 「2060年までにカーボンニュートラルを実現する」とした中国においては、日本のハード的な技術やノウハウが大きなビジネスチャンスになり得ます。日本でカーボンニュートラル関連の技術を有する企業は、中国企業とうまく提携することで、大きな利益を生み出せるだけでなく、地球温暖化対策にも貢献でき、企業のブランド価値も高められるでしょう。

王 沁 (オウ・シン)
NGA(アプリ開発&運営事業)CEO
2010年来日、慶応義塾大学卒業後、海外向けコンテンツを手がける「JCCD.com」やAIプラットフォーム「AiBank.jp」を運営しながら、リクルートホールディングスに入社。21年に退社し、NGAを創立。著書に『中国オンラインビジネスモデル図鑑』(かんき出版)

(この記事は、「日経トップリーダー」2021年12月号の記事を基に構成しました)

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