<span class="fontBold">みなみ・けいた</span><br>1985年石川県生まれ。米カリフォルニア大サンディエゴ校経済学部を卒業後、2009年に大和総研に入社。東京都内の外食企業などの勤務を経て13年1月に家業であるチャンピオンカレーに入社。16年10月から3代目の社長に就任(写真:山岸政仁)
みなみ・けいた
1985年石川県生まれ。米カリフォルニア大サンディエゴ校経済学部を卒業後、2009年に大和総研に入社。東京都内の外食企業などの勤務を経て13年1月に家業であるチャンピオンカレーに入社。16年10月から3代目の社長に就任(写真:山岸政仁)
『贈与論』
著者 : マルセル・モース
訳者 : 吉田禎吾、江川純一
出版社 : 筑摩書房
価格 : 1320円(10%税込み)

 今回ご紹介するのは、文化人類学者で「フランスの民族学の父」と呼ばれる、マルセル・モースの『贈与論』です。モースの研究や著作は、後進の社会学者たち、とりわけ文化人類学者・民族学者として高名なクロード・レヴィ=ストロースに大きな影響を与えました。

 今からおよそ100年前の20世紀の初頭、前世紀から続く資本主義の高度化は、市場経済の発展を促しました。副次的な結果としてお金が汎用的な価値尺度となり、人々は経済的価値や利益をより求めるようになる。そんな時代です。

 この時期に初期の社会学は大きく進展しました。それは急速に広がっていく功利主義的な価値観を前に、人間社会が本来持つ価値体系を探す動きだったとも捉えられます。『贈与論』もこの文脈の中に位置づけられる書です。モースは、古代からの伝統社会において「贈与」が果たしてきた、「人と人を結びつける働き」に注目しました。

贈与は単なる財の交換ではない

 ここでの「贈与」とは、現代社会における親子間などでの贈与とは趣旨が異なります。貨幣がまだ存在しなかった社会における取引行為、と捉えてください。

 太古の社会で行われていた物々交換は、現代における貨幣取引とは異なり、単なるモノの価値の交換ではありませんでした。人々は取引を通じて、財の交換と並行し、取引主体同士の関係性を築いていました。モースはここに、現代社会が失ってしまった要素を見たのです。

 本書では、北米の太平洋岸地域の諸部族で見られる「ポトラッチ」や、ニューギニア島周辺の諸島の「クラ」と呼ばれる儀礼的贈物交換の体系を分析します。その結果、原始社会における取引としての「贈与」の共通する本質として

(1)他者への贈与が義務である

(2)贈与は受け取る義務がある

(3)贈与を受けたら返礼する義務がある

という3点を挙げます。つまり、「応酬関係が不文律として制度化されていた」ということです。

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