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AI(人工知能)や5Gなど新技術が相次ぎ飛び出す時代。中小企業もその変化を避けては通れなくなっている。不動産会社のウチダレックや精密加工メーカーのひびき精機は、そうした波を捉えて成長に結び付けている企業だ。

 今、新たな技術が社会と産業のあり方を根本から変えようとしている。AIや、あらゆるものがネットにつながるIoT、高速・大容量通信を可能にする5G、自動運転……。例えば、AIは膨大な情報と現実の出来事を分析して人の判断を助け、一部、人の受け持っていた仕事を置き換えている。

 中小企業の経営者は、こうした出来事を遠い将来の話であり、自分とは関係のない世界のことと思いがちだが、そうではない。前の記事で取り上げた日野川漁協の例は、今はネットとアプリの活用だが、今後さらに進化する可能性がある。

 フィッシュパスは開発したアプリを全国の漁協に広げる考えだ。となれば、各地域の釣り客の行動を集めたビッグデータを生み出すこともできる。釣りの経験年数や技量によって、広い釣り場のどこに行くと釣果を上げる可能性があるかといったアドバイスもデータを使って可能になるかもしれない。そうなれば、サービスも料金体系も大きく変わる。

 これから経営は激変する。デジタル化の波を捉えて動く企業はあなたのそばにも出てきている。

付加価値のない「仕事」

 鳥取県米子市のウチダレックは、内田良一社長の父親が1969年に創業して約50年という地方では古株の不動産会社だ。事業の柱は土地・建物などの売買仲介と賃貸。ごく普通の中小企業だが、技術の活用によってここ3年でその経営体質は大きく変わってきた。

 「どうも無駄な仕事が多くないかな」。2016年初め、東京のIT企業などで働いた後、帰郷して入社したばかりの内田光治専務がこんな声を上げた。光治専務は良一社長の長男である。

 気がついたのは業務内容を社員が個別に書類に記録し、保存していたため、非効率だったこと。例えば、アパートなどの入居者から部屋の修理依頼などの電話連絡が入ると、受けた社員が書類に記録し、後で対応する。すると、記録が他の社員の目に触れないままになることもあり、処理が済んだかが曖昧だった。依頼に対応しようとしたときに書類が見つからず、時間がかかることもあった。

 中小企業には全く普通の仕事の進め方だろう。しかし、気づいてみると処理の遅れで入居者から再度クレームを受けてやり取りしたり、最初の書類を探したりといった仕事が多数発生している。それらはほとんど付加価値につながらない「作業」なのである。

社内の反発も乗り越えた

 光治専務が取りかかったのは、日本でも広く使われている米大手の業務管理ソフトを自社にカスタマイズし、導入することだった。新規顧客からの物件問い合わせ・引き合い、入居者からの依頼・クレームをデータベースに記録するようにした。現在の業務処理状況を全員で確認し、処理遅れなどが一目で分かるようにもした。

 さらに専門のシステムエンジニアを採用し、昨年春には社内にある経理、賃貸、物件管理の部署の業務分析まで実施。不要な仕事を見つけ出す一方、部署内・部署間の仕事のつながりも整理して無駄な業務をさらに減らしていった。

 ただし、この種の改革は簡単には進まない。無駄の多い方法でも、従業員にとっては慣れ親しんだもの。それを変えるのはおっくうだし、ITに慣れていない人には負担が大きくなるからだ。