「AI」「IoT」に「ビッグデータ」・・・・・・。経営を根底から変えるデジタル技術が登場している。
 ただ、うちには関係ないと敬遠している経営者は多い。
 だがここに来て、食堂、小売業から塗装職人の現場まで、デジタル対応で経営改革を果たす企業が増えている。
 先進事例から「中小企業流」のデジタル対応の道を探った。

 「組合員も高齢化してきたし、何とかしないと」

 福井県中部を流れる日野川。渓流から浅瀬までさまざまな姿を見せ、絶好の釣り場が多いことで知られる。だが、副組合長の佐々木武夫氏はここ数年、釣り客の姿を見ながら頭を悩ませ続けてきた。

 客数は10年余り徐々に減ってきた。レジャーの多様化により、釣り人口が減少しているせいもある。それに加えて最近は、約120人いる組合員の高齢化が次第に進み、川や入漁客の管理が負担になってきたからだ。

 日野川漁協は河川など内水面の漁協なので、漁民が中心の海の漁協と違って、組合員のほとんどは漁で生計を立てているわけではない。自治体から河川の管理や、その川に生息してきた魚の育成、放流などを請け負う。その一方で、顧客が釣りを楽しむための入場券である遊漁券を販売したりして稼ぐ。自営業者の集団である海の漁協よりも、組織的に活動しており中小企業に近い存在といえる。

 そんな日野川漁協の苦境を一変させたのが、今年4月に導入したスマートフォン向けのアプリを中心としたデジタル技術だった。

アプリを開発したフィッシュパスの西村社長(右)と、それを導入して大きな効果を上げた日野川漁協の佐々木副組合長(写真/山岸栞依)
アプリを開発したフィッシュパスの西村社長(右)と、それを導入して大きな効果を上げた日野川漁協の佐々木副組合長(写真/山岸栞依)
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スマホで仕事を軽減

 その仕組みはこんなものだ。まず釣りファンが、アプリをインターネットからスマホなどにダウンロードする。そして、アプリを使って日野川漁協の1日や年間の遊漁券(1人それぞれ3000円と9000円)を購入。実際に日野川に行って釣りを始める際にアプリ上のボタンを押すと、日野川漁協に「釣り開始」が連絡されるというものだ。

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