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あなたに翼はあるか

翼があるかどうか。

 世の中に「おれも起業家だ」というベンチャー経営者は多くいるけれど、「おまえ、翼はあるのか」と。しょせん一時的なジャンプではないかと。

 100万人規模のユーザーをつかむと、1ビリオンぐらいの企業価値になる。それ未満のものというのは、一時的にちょこっと出ても、競争相手に抜かれていくか、あるいは途中でもう事絶えてしまう。それらは僕にしてみれば、起業家もどきです。

 人のまねではなく、新しいものをクリエイトして新しいチャレンジをするのが起業家です。業を起こす。模倣するんじゃなくて「起こす」。新しい世界観をつくり出している。それが起業家です。

 僕がビジョン・ファンドをつくったのは、100万人規模のユーザーに価値を与える、しかもそれが、ある程度サステイナブルな事業を支援するためです。ユニコーンだけに特化した投資グループは、今まではなかった。

 新しいユニコーン、次のユニコーンを追い求めて育てるベンチャーキャピタルは、世の中に5000社ぐらいある。それらはユニコーン未満のところに投資していた。

 けれど、(ビジョン・ファンドのように)ユニコーンのレベルに既にある企業をさらに育てようと思ったら、軍資金からして違う。

 本当に「事を成す」のは企業価値が30ビリオン、100ビリオンという規模になっていくこと。それが本当の事業であり、事業家ですよね。企業価値30ビリオンドルで、10ミリオン(1000万)以上の人々に価値を提供して、しかも継続できている。これが事業家レベルで、創業者の場合が多い。

 これを2代目、3代目、4代目、5代目と事業を受け継ぎ、ある程度、事業を継続して治めていくという人たちがいる。こういう人たちが経営者です。その人たちはプロフェッショナル経営者として、バランス力と知恵と知識があって、しっかりと「事を治める」。

 こういう経営者の人たちに、クレイジーさはあまり要求されません。むしろバランス力。そして知恵、知識が必要。知恵、知識、バランスだとか、複雑な計器飛行を行っていく能力は必要ですが、クレイジーさは必要とされない。

 だけど、ユニコーンの起業家は、やはりクレイジーさが必要。ドライビングエンジン、クリエイティビティーですね。そういうものがないと突破できないわけです。

1957年佐賀県生まれ。81年日本ソフトバンク設立。96年ヤフー社長。2006年ボーダフォン(現ソフトバンク)社長。17年、ソフトバンク・ビジョン・ファンドを設立する(写真:菊池一郎)