同様の広さの競合物件に比べて家賃は3割増しにもかかわらず、空室待ちの入居希望者が部屋数の5倍近くに上る賃貸マンションがある。東京・板橋の不動産会社リブランが開発する「ミュージション」。東京・神奈川・埼玉・千葉に現在22棟、575戸を供給する。

高い遮音性能を建物に持たせ、室内でいつでも気兼ねなく楽器の演奏など音を出せるのが特徴。プロの音楽家や音大の学生、趣味で音楽活動をする社会人のほか、デジタルで音楽制作を行う人などが入居している。大きな音を出すためにわざわざ外部のスタジオを借りる必要がない上、通常のマンションと同等の居住性も確保されているのが売りだ。
最近は他社も遮音性能を強化した防音マンションを建設しているが、「好きなだけ音楽が楽しめるマンション」として完成した「ミュージション川越」の竣工は2000年まで遡る。
大量供給からの転換
リブランは1968年の設立。東京・埼玉の東武東上線沿線を中心に分譲マンション・戸建て住宅のデベロッパーとして成長した。
大手のマンション開発会社とは違う独自性のある間取りやデザイン、マンションに採用されることはまれな自然素材を使った内装、さらに入居者同士の交流を図りコミュニティーづくりを支援するなど、特徴ある事業を展開してきた。
そんなリブランがデベロッパーという業態を大きく変え始めたのは、2008年に起きたリーマン・ショック以降。「人口動態が示す未来を見れば、住宅戸数の過剰は既に明らか。分譲マンションをたくさん造って右肩上がりの売り上げにこだわる事業モデルは必ず潰れると確信した」(鈴木雄二社長)。
現在の主軸である不動産投資事業、土地活用コンサルティング、中古マンションのリノベーション事業は、どれも10年前には存在しなかったもの。「会社の中が100%入れ替わった」と鈴木社長は言う。
分譲マンションを大量供給していた2000年代初めに約160億円だった売上高は現在30億円ほどだが、利益を稼ぐ力は向上し「より倒れにくい会社になった」という。10年がかりの業態転換はいかになされたのか。
リブランの沿革

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