みなみ・けいた
みなみ・けいた
1985年石川県生まれ。米カリフォルニア大サンディエゴ校経済学部を卒業後、2009年に大和総研に入社。東京都内の外食企業などの勤務を経て13年1月に家業であるチャンピオンカレーに入社。16年10月から3代目の社長に就任(写真:山岸政仁)
『ガリア戦記』
著者 : ユリウス・カエサル
訳者 : 近山金次
出版社 : 岩波書店
価格 : 1067円(10%税込み)

 今回は、ユリウス・カエサルの著した『ガリア戦記』を紹介します。この連載で扱ってきた書籍の中では最も古く、紀元前52~51年に著されたと考えられる遠征記録です(最後の8巻のみ、カエサルの死後に執政官を務めたヒルティウスによって書き加えられています)。

 世界史に明るい方には不要な説明ですが、紀元前58年から51年にかけ、属州総督だったカエサルは自ら兵を率い、現在のフランスとベルギーに当たるガリア地方へ、諸族の反乱平定を目的として遠征しています。これが「ガリア戦争」であり、『ガリア戦記』はカエサル自らがその戦果を元老院に対し報告した書簡を下敷きとしています。

 カエサル本人は当時、民衆から非常に高い人気がある一方で、強大な軍事力を持つポンペイウス、莫大な資産による経済力を誇るクラッススといった政敵に伍するには政治的基盤が脆弱でした。

 そのカエサルに多くの富と政治力をもたらしたのが、このガリア戦争の成功です。つまり、後に数多の言語で「皇帝」の語源となった遅咲きの傑物が、飛躍の時を迎える前後の記録と言っていいでしょう。またカエサルは文筆家としての才もあり、その簡潔・明瞭・力強い文体はローマの生んだ文芸の中でも高く評価されています。

 さて、この本は多様な読み方ができます。特に戦略論的な観点では、①長期的視点の大切さ(ガリア諸族は諸族間で対立構造があり、本質的に長期的協働ができない。一方でカエサル率いるローマ軍は、長期目線での戦略を用いる)や②情報の重要性(ベルガエ人との戦争時には隣接する部族より情報を収集し、アレシア包囲戦では敵と外部との連携を断ち判断を誤らせるなど、情報の収集と活用を重視した)、③戦闘そのものよりも、先立つインフラ整備が成否を分かつこと(ローマ軍の強さの源泉は戦闘力ではなく、土木建築技術にあった)などはとりわけ言及されやすい点ですし、これらを参照したビジネス書やコラムなどは枚挙に暇がありません。

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