採れるときに採る

 もちろん新卒採用は簡単ではない。採用ゼロの年もあれば、大手が採用を絞ったリーマン・ショック後のように数人採れた時期もありました。中小企業は自分の会社が欲しいときに採用するのでなく、採りやすい時期に採らないと、いつまでも採れない。学生が来たときにまとめて採用できる決断が重要だと次第に分かりました。

 こうして1990年には約20人だった社員は、95年には約30人、2000年には55人(関連会社含む)と少しずつ増えていきました。土木未経験の若手の定着のため、座学と実地の研修プログラムを入社2カ月間で受けてもらうなど教育の仕組みも整えました。

 また、施工管理の社員には土木施工管理技士などの資格取得のため先輩社員が講師となり、社内で勉強会や模擬試験をスタート。施工担当の社員向けにはバックホウ(ショベル)検定、型枠加工・組み立ての検定を独自に作りました。

長野県の土木工事の実績ではトップクラス。施工管理と現場施工の社員を両方採用し、育ててきたことが、大きく寄与している
長野県の土木工事の実績ではトップクラス。施工管理と現場施工の社員を両方採用し、育ててきたことが、大きく寄与している

 2010年頃までの売り上げは10億円に満たなかった。普通の学生なら県内大手企業に目が向くでしょう。そこで必要なのが、他社にないものは何かと考えること。さほど自慢できるものでなくても、どの会社にも何かしら特徴があるはずです。私の場合、教育の仕組みがあることがその1つでした。

他社にないものは何か

 他社にはない特徴はもう1つだけありました。ソフト開発をしていたことです。当初はあまりに人手が足りなかったので、品質管理の書類などを自動作成するソフトを自作しました。大学でコンピューターを触っていたので、素人が作ったごく簡単なものです。

社内の情報システム部で建設系のシステムを開発し、関連会社のワイズ(長野市)が販売とサポートを担当している
社内の情報システム部で建設系のシステムを開発し、関連会社のワイズ(長野市)が販売とサポートを担当している

 その延長で、公共工事の申請に関わる「経営事項審査ソフト」というものを、外部のシステム会社に作ってもらいました。販売実績は微々たるものでしたが、「業務管理ソフトも作る土木会社です!」と合同説明会で話すと、「大学の土木系学科にいるけれど、就職先は泥臭い土木会社は嫌」という学生が入ってくれたりしました。

 繰り返しますが、どんな会社でも、他社にはないこと、他社より多少は優れているかもしれないと自慢できることがあると思うのです。そこを学生に向けてアピールすれば、数は少なくても、中小企業に入ってくれる学生がいます。

 私の場合もそうして採用した新人を手間はかかるけれど一から育て、施工管理と施工部隊を両方備えたことで、工期短縮が図れたのです。長野県の優良技術者表彰を毎年取れるようになり、売り上げは右肩上がりで伸びました。それらを採用の募集文で書き出したのは、新卒採用を始めてから15年がたった2010年頃からです。

 こう書くと、学校の先生も親御さんも安心する。すごく田舎の会社で泥臭い土木会社となれば、親は心配ですし、高校の先生も寄ってきません。でも、地道に採用活動を続けたことで15年と時間はかかりましたが、安定的に採用ができるようになったのです。

 平均年齢は年々下がり、20~30代が中心に。リクルートの人から教えられた「2012年に18歳人口が4割以上減る」という期限に何とか間に合ったのです。

(この記事は、「日経トップリーダー」2021年12月号の記事を基に構成しました)

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