身軽な経営に逆行

ギャップを新卒採用などで埋めた
ギャップを新卒採用などで埋めた
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 新卒を何人も採るようになると、同業他社から小ばかにされました。「福澤君は経営を分かっていないね。不況だからどの会社も非正規社員を活用し、人件費を下げようしている。それなのに福澤君は経費がかかる正社員を採用している。何を考えているのか」。

 私が新卒採用を始めたのは1990年代半ば。バブルが崩壊して、デフレの時代に入ろうかという頃です。世間は固定費の削減が第一にありました。建設業界でも施工管理だけに特化し、現場作業は職人を抱える下請けに任せるのが正しいとされました。けれど私は両方の社員を抱えました。

 管理だけをする土木会社は複数の施工会社とスケジュール調整をするため、作業間で待ち時間が生じやすい。これに対して当社は大型クレーンも社内で持ち、現場担当の社員が操作します。そのため、複数の工程に隙間がなく、工期が2割以上短くなるのです。

 採用しても育成に困るから、他社はその選択をしなかった。ただ、18歳人口が4割減る2012年には、仕事を振ろうにも、人手不足で引き受けられない外注先が続出するのではないか。10年後、20年後を見据えれば、新卒採用を続け、自前で社員を抱える経営にシフトすべきだと信じました。

 ある本を読んだことも、私の迷いを断ち切ることにつながりました。『人口ピラミッドがひっくり返るとき』(草思社)という本です。

 「西側先進諸国の自由経済の土台をなす人口統計の事実──それは、若い人口は常に増えつづけるという事実だ。われわれが当たり前のことと思ってろくに考えてもいないこの土台が、じつはわれわれの足下でくずれつつある」

 そんな書き出しで始まる本を読むと、人口が減れば住宅やビルも不要になるので、民間建築はいずれ落ち目になるという未来が見える。当社では一部で公共建築なども手がけていましたが、この本を読んだことをきっかけに土木に特化しようと決めました。

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