私に新卒が採れるのか

 「あくまでも予想ですよね?」。リクルートの人に尋ねると、首を横にぶんぶん振った。「多少ずれることはあるでしょうが、いろいろな予測値の中でも人口動態はかなり正確です。福澤さん、これはほぼ間違いのない未来です」。

 20人の社員はほとんど50、60代。20年後は誰も残っていないでしょう。しかも、事務所のある長野県飯山市は雪深い田舎。長野市から車で1時間もかかる。ただでさえ若者が採用できないのに、4割も減ったら──会社は絶対に存在していないと確信しました。

 どうすれば存続できるのか。地元の同級生に頼んで何人か入社してもらっていましたが、知人や縁故頼みでは足りない。50代の社員が辞める前に何としても若い社員を増やしていくしかない。私は覚悟を決め、大学生が集まる合同就職説明会に申し込みました。

 長野駅前のホテルで開かれた説明会は、地元の銀行や有力企業がブースを出していました。そこには行列ができても、当然ながらうちには全く来ない。丸1日ブースにいて、学生が2人か3人。それも説明会を主催するリクルートの人が強引に連れてきた学生ですから、採用には全く至りません。

 あれは精神的にかなりつらかったですね。逃げ出したかったけれど、我慢して読書にふけっていました。それでも、説明会の期間中毎日しつこく出ていると、たまに少し変わった学生がブースに来てくれることが分かりました。

 「大手企業ばかり回っていたら結局内定が出ずに、気がついたら9月になっていた」という物静かな学生。成績はいいのですが、おとなし過ぎて地元の金融機関に断られ、「行くところがないんです」とやって来た学生。

 彼らは決して能力がないのではない。入社した途端に辞める新人もいましたが、確実に一部の新卒社員は定着し、戦力になってくれました。そのうちの1人は今、関連会社の取締役を務めています。

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