インフラのコストは安くて当たり前──。
そんな「常識」は崩れた。燃料価格と電力市場価格の高騰を織り込んで、電気料金は来春も上がり続ける。中小企業の経営者からは「先が見通せない」「このままでは持たない」という声が絶えない。 コスト削減の選択肢が狭まる中、どのような自衛策が今、取れるのだろうか。

(写真/PIXTA)
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<目次>
・使い方改革と省エネで電力高騰を乗り切る
・「創エネルギー」取り入れ、電力価格変動リスクを抑える

「インフラの電気がこんなに不安定なものになるとは。もう意識を切り替えないといけないのだろう」。ある中小製造業の経営者は言う。

 2016年の電力小売りの完全自由化から、新電力と言われる電力小売事業者が多数参入した。大手電力会社より安い電気料金を売りに顧客を集め、対抗する大手電力会社も企業顧客向けに値引きを行うなど、電気料金は「安く選ぶ時代」になったとされた。

 それを揺るがす第一波が、20年から21年にかけて電力逼迫がもたらした電力市場価格の急騰だ。

 化粧品製造のクレコス(奈良市)は、佐賀県唐津市の工場で自然電力(福岡市)と契約していた。その電気料金が21年の初め、突然3倍以上に高騰した。

 「対応できないと言われて契約を九州電力に切り替えた。風力発電による再生可能エネルギーを売る自然電力に戻したい気持ちはあるが、いまだに九電の2倍以上という価格では当分難しい」(暮部達夫社長)

相次ぐ値上げ

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 さらに高く長い第二波が始まる。新型コロナの世界的な拡大によりエネルギー需要は落ち込んだが、経済活動の再開とともに急速に需要が拡大。さらに22年2月のロシアによるウクライナ侵攻後、石炭やLNG(液化天然ガス)、卸電力の高騰が加速した。

 プラスチック加工の中小企業、A社は東京電力系の新電力と契約していたが、22年4月と7月の2度にわたる値上げで、月々の電気料金は一気に2倍を超えた。

 その後、一般送配電事業者からの供給に切り替え、料金は約2割下がった。

 しかし一般送配電事業者は22年9月から一斉に、市場価格調整額を料金に織り込む市場連動型に変更。それによってさらに60%の料金値上げが見込まれたために、再度契約を切り替えて関西電力に移った。それでもA社の場合、半年あまりの間に電気料金は2.5倍に跳ね上がった。

 既に供給停止を決めたり、新規受付を停止したりしている電力会社もあり、「高圧契約をしている企業の場合、選択肢はほとんどなくなってきている」(日本電気保安協会の平井一二三社長)。価格が上がっていくことが確実であっても、電力の調達先を切り替えることによるコスト削減の選択肢がほとんどない状況だ。

 大手電力10社の22年9月期の連結決算は、9社の経常損益、純損益が共に赤字。燃料価格の高騰や円安の進行による財務基盤の悪化を挙げた。

 既に大手電力各社は、法人向け電気料金を23年4月までに値上げすることを表明している。

 電気料金は、毎月定額の基本料金と、使用電力量によって決まる電力量料金の合計だ。電力量料金の単価に燃料費調整単価、再エネ賦課金がプラスされる。東電、中国電力などは23年4月から、電力を調達する卸電力市場価格も法人向け標準料金に反映することを決めている。

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