顔認証乗車の実験も

 そして、今年11月からはコミュニティーバスの運行も始めた。分譲の初期から住む高齢の住民の間で、小回りの利く交通手段が欲しいという声が上がり始めたからだ。エンジンはCO2の排出量が少ないクリーンディーゼル式。来年2月には顔認証の実証実験も予定し、財布なしの快適乗車を目指す。

 バスの運行で、住民がより短い時間で交通機関にアクセスできるようになった。バスは、鉄道の運転士が大型二種免許を取得するなどして運行しているという。社員120人の山万が30人程度を割いて鉄道やバスを走らせる。しかも、環境に配慮した先端技術を採用したり、宅地からの距離を綿密に計算してバス停を決めたりと、一般の公共交通の域を超えている。

 防犯対策も街の重要な機能という考えの下、充実したセキュリティーサービスも提供している。駅前に交番がなかったために、自前で「防犯・防災パトロールセンター」を開設し、警備員を常駐。また24時間365日、専用パトロールカーが街中を巡回し、学校の下校時には通学路に立つ。

 警備事業は別会社で運営しているが、事務所は山万本体と同じフロアにあるので、実質的には一体経営をしている。こうしたグループ会社が計5社ある。京成電鉄のユーカリが丘駅に直結した「ウィシュトンホテル」もその1つだ。

 開業は1998年。「特急も停まらない駅にホテルを作ってどうするのか」と首をかしげる声もあったというが、ここでも山万が見ていたのは、あくまで住民だ。

 「核家族化により、親御さんを呼んで何かをするという場面はどんどん増えるはずと考えた。冠婚葬祭に限らず、七五三や敬老の日などいろいろな機会に、親御さんの宿泊場所に使ってもらえる。いわば街の応接間だ」(企画・ビル事業部の久須見裕文次長)。

 主にビジネス客や観光客を取り込む周辺ホテルの中には集客に苦しむところも出ているが、山万のホテルは堅調だという。

 ほかの街であれば、行政が手がけることが多い子育て支援事業も、山万は自前で取り組む。保育園や学童保育所のほか、「ユー! キッズ」という子育て支援センターも運営している。このセンターでは、子供だけを預かることは基本的にしない。子供と親が一緒の時間を過ごしたり、親同士の交流を図ったりするための場所だ。

 子育てのしやすさが評判を呼んだ結果か、2010〜19年の10年間で9歳までの子供が、それまでの約50%増加した。

山万の事業はこんなに広い
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